2013-2014釧路ロータリークラブ　第18回（通算3288回）例会

会長の時間

会長挨拶　吉田　秀俊　会長

　皆さん、こんにちは。先週の２・３・４日の３連休は、非常に気温も高く穏やかな天気で、まさに小春日和という感じでしたけれど、今日の11月７日は『24節季の19節季目で立冬』となっております。天気の長期予報を見ますと、来週から各地に雪のマークがチラホラ見えて「冬が近いのかな」という感じがします。 　最近、天気が非常に気になっています。その訳は、11月10日に網走ロータリークラブの60周年記念式典が網走市内で開催されます。スポンサークラブとしまして、清水パストガバナー、脇幹事、私の３人で出席をして参ります。網走へ行く道中には何ヶ所か峠がありますので、雪が降らないことをずっと願っているところです。 　さて、先月の26日、当クラブで大変おめでたい行事がありました。皆さんご承知のとおり、当クラブの白幡さんの息子さんと五明さんのお嬢さんがご結婚されまして、その披露宴が開催されました。非常に和やかな雰囲気の中で進められ、特に新郎、新婦の父親同士が会場で抱き合うという、他の結婚式ではなかなか見られないところもあって、参加した私たちとしても非常に"ハッピー"になれる結婚式でした。改めまして、この場を借りてお二人・ご両家にお祝いを申し上げたいと思います。おめでとうございました。 　最後になりますけれど、釧路ロータリークラブの定款並びに細則に則り、本日は『次次年度会長』並びに『次年度理事』の選挙の公示日です。自薦・他薦は問いませんので、是非何方かをご指名していただければ幸いと思っております。ただ、１週間を過ぎまして推薦がない場合には、会長並び理事会に一任されたと判断をしまして、12月の第一例会が『年次総会』となっておりますので、その場で発表をさせていただき皆さんのご判断を仰ぎたいと思っております。その際には、是非よろしくお願いいたします。 　それでは、これで会長挨拶を終わらせていただきます。ありがとうございました。



退会挨拶
北洋銀行　釧路中央支店長　竹内　巌　会員

皆さん、こんにちは。貴重なお時間をいただきまして、私、突然11月11日付で本部へ転勤となりましたので、本日が例会への最終出席ということで、幹事さんにお願いをしてご挨拶をしたいと思いこの場に上がっております。 あっという間で、昨年の７月に当クラブへ入会をしまして１年と４ヶ月ちょっと。入会をしたときの挨拶で記憶にあることは、「ここでシングルになって札幌へ戻りたい」というお話しをしたと思いますが、回数は昨年も今年も35〜36回位やりましたが、全然シングルどころではなく、今年は、80台が２回しか出ず、「何回やっても駄目だな」ということがよくわかりました。 もうひとつ入会の挨拶で申し上げたことは、「飲み食いが大変好きなので、いろいろなお店を開拓して歩いて、美味しいものをたくさん食べて転勤をしたい」それは出来たと思っています。特に残念なことは、この地で一番美味しいと思った"メンメの湯煮" や"生のくじらの刺身"がこれから食べられないと思うと非常に悲しいです。 最後に、「11月15日のししゃもが一番美味しい」という話を最近聞いたものですから、11月15日に引っ越していますけれども、"ししゃも"だけは食べて出て行こうかなと思っております。 今度行く部署は、本店の融資部で、多分１日中机に座っている仕事になるので、少々居心地が悪いと思っています。 これほど短い期間で転勤となったのは、ひとえに皆さま方に何度かお話しをしたと思いますけれども、人間関係、職場の関係で『パワハラ』等で騒がれたものですから、一応もう「支店長職としては無理かな」ということで移動になったのではと思っております。多分その面が強いと思いますが、子供が非常に小さいものですから"クビ" にならず、ひとまずよかったと思っています。 今度は本店ビルにおります。ビルの中には、『すし善』さんや『美幌の焼肉店』等、美味しい店がたくさん入っていますので、お声がけをいただければご馳走をしたいと思っていますので、是非ご連絡をいただければと思っています。本当に短い間お世話になりました。ありがとうごいました。

本日のプログラム

阿寒マリモの生態と世界遺産登録に向けて

釧路市教育委員会『マリモ研究室』室長　若菜　勇　様

　皆さま、こんにちは。只今ご紹介をいただきました、釧路市教育委員会の若菜と申します。短い時間ではありますけれども、最近、市民の皆さんから「どうして阿寒湖が世界自然遺産登録の話しなのか」としばしば問われます。本日は、そこに焦点絞って非常に簡単ですが、ご紹介したいと思います。 そのお話しに入る前に、どうして私が阿寒で『マリモ』の研究を行うようになったかということです。最近ではあまり触れられることがなくなりましたが、マリモが発見されて100年少しになります。19世紀の終わりに、阿寒湖でマリモが見つかり"ボール状の形"にちなんで『鞠状の藻』ということで『マリモ』という和名が付けられました。それからまもなく、阿寒湖では、森林の伐採等いろいろな開発行為が始まり、マリモが減り続ける事態が続きました。これは阿寒湖の地図ですが、４ヶ所の『球状マリモの群生』が知られていて、西については20世紀初頭になくなっています。更に戦後、阿寒湖が『観光地』として開発をされて行くと、温泉旅館から出る雑排水が湖の中に流れ込んで、残された２つの群生地でもマリモが減り続けるということが分かりました。 私の出身校である北大農学部・理学部が継続して半世紀以上に渡りマリモの研究を続けていますけれども、その中で特に1973年〜1985年の12年間に、球状マリモの半分が減ってしまったということが判明しました。これをそのまま受け止めると、「次の10年でまた半分、それからまた半分ということになれば、半世紀を待たずにマリモが消滅してしまうのではないか」と非常に危機感を持って地元では捉えられた訳です。 その結果、地元のマリモ保護団体の『マリモ保護会』という組織の40周年記念のシンポジウムが89年に行われました。その時に「このままでは研究が進まないから、誰か若い者を付けて専念させた方が良い」ということで91年に私が学位を取ったばかりだったということで、学芸職員として赴任をすることになった訳です。 このときに状況を非常に顕著に表している言葉があり、当時の阿寒町教育委員会の幹部から「マリモが減っていることはよく分っている。状況がどうであるかをずっとやって来たけれども、どうしなければいけないか。それを研究してほしい」と言われました。当時、まだ30代の若造でしたけれども、一応信用をして下さって潤沢な研究環境の中でいろいろなことを始めたのです。 私が着任する直前、この２つの本が発刊されて、１つは中沢信午先生の『マリモはなぜ丸い』、もう１つは坂井與志雄先生の『マリモの科学』。くしくも、お二方の直系の弟子ではありませんけれども、その講座に私は所属していて、まさに「その宿題を全部お前に預けたからやりなさい」ということで調査研究が始まりました。　 ところが、最初の10年はほとんどはっきりしたことがわからない。とにかく阿寒湖だけではなく日本各地、世界各地を観て歩きながらデータを蓄積して行き、いまから10年ほど前にようやく全体図が薄ぼんやり見えて来て、そこから一気に解明のための具体的な調査研究、データ取りが始まって今日、マリモという生物がどのような生き物なのかが具体的に語ることが出来るようになりました。 本日の話の中で、時間は短いので、阿寒湖に集中してご紹介をすることになります。1995年〜1997年にかけて阿寒湖の全域を潜って『マリモの分布地図』を作る仕事を行いました。その結果、ここにありますように、昔からよく知られている球状のボール状のマリモの他に、小石に付いたコケのようなものや綿屑状になった湖底に堆積するもの等、いろいろなタイプのマリモらしき藻が見つかりました。「通常は球状のマリモを残すことが仕事だから、こっちはどうでもいいじゃないか」と思われるかも知れませんけれども、もしもこの全てが同じ生物であって、球状のマリモがこのようなものから生まれて来るということになれば、その保護の対象そのものが大きく変わってしまいます。この２つのことから阿寒湖にはいろいろなタイプのマリモが生息している可能性もあり、或いは同じ生物が住む場所によって形を変える可能性がある。それをはっきりさせないと、その守るべき丸い生物が何か分らないというところに立ち至ったのです。 私の目的は、あくまでマリモの保存ですので、「同じ生物か、違う生物か」ということを議論するのは、生物学でいう分類学という分野の学問ですが、このようなことに関して行うつもりはサラサラ ありませんでしたけれども、これを決めないと作戦が立てられない。それで何を行ったかというと、分子系統という『ＤＮＡを使った系統解析』をすることになりました。これが、当時私たちが研究をスタートしたときの総理学の分野の常識になっていた知識で、７種類、我国では認識されていたということがあります。これが同じかどうか。当時マリモがどのような生物かというと「丸くなる藻類」だと。「なぜ丸くなるのか」というと「マリモだからだ」という理解の仕方だったのです。そうではなくて、これが本当に同じかどうかＤＮＡを使った研究ではっきりとさせる必要がある、ということでこのような仕事を行いました。 『系統解析』。系統とは、私たち身近なところでいうと、家系図です。生き物の家系図をＤＮＡという遺伝情報を使って描く。そうすると、家系ですから親戚がわかる。それから、赤の他人だと思っていた人が、その血液を受け取ってＤＮＡを調べたら実はもの凄く近い存在だったことはしばしば見聞きすることですけれども、そのようなことをマリモについても行ったのです。結論からいうと、先ほど７種類あるといわれているマリモは、阿寒湖とと同じ種類のマリモか、それまで認識されていなかった全く別の種類の『タテヤママリモ』（当時そう呼ばれていた）のいずれかであるということが確認されたのです。これで、私たちの守るべきマリモはなにか分かった訳ですが、この系統図を描くということは、家系図を推定することになりますので、それを元にしていろいろなことが分かって来ます。 １つは世界的な分布です。当時、「球状のマリモは、もしかすると阿寒湖の特産だ」と言われていましたが、この手法を使って世界各地からサンプルの収集、或いは自分が出掛けて行って藻を取って調べてみる、そうすると日本列島だけではなく、シベリアを横断してヨーロッパ、北欧等、世界広く分布していることが確認されました。これは、地元では非常に評判が悪い研究です。「マリモはもしかすると阿寒湖特産である」「これが、世界どこにでもいる広範種であるとすると、珍しくも何ともない。マリモの価値をおとしめるのではない！困るのだ」と地元の観光業者から直接言われました。 ところが、この研究を通じてはっきり分かったことは、マリモが球状になって、10�p以上の大きな玉になって、しかもこのように群れる。湖は、阿寒湖の他にアイスランドにある『ニワトン湖』の、この２つだけなのだということが確認されました。他のマリモは先ほど写真で見ていただいた、石に付いていたり、綿屑状です。すると、丸くなるためには、湖の環境の要因が必要です。球状マリモは特別な湖でなければ出てこないのだから、阿寒湖は特別な何かを持った湖だ」ということで、逆にこの研究を通じて球状マリモの希少性が初めて科学的に説明できるようになりました。 　もう１つ重要なことは、これが描かれた家系図です。それまでマリモとは、糸状草といわれるグループのメンバーと思われていましたが、それから別れたグループの一員である。これの重要なことは、それまで形でしか認識が出来なかった近縁の生物をＤＮＡという情報を使って近縁種を特定したことになります。ですから、共通の祖先から種として枝分かれして、いわゆる"分家"しながら今に至っているということが分かります。この結果で重要だったことは、このメンバーが先ほどのマリモと同じように岩についたり綿屑状になるものがありますが、球を作るということです。この球を作るとは、ここにあります。『アオミソウ』『ウイットロキエラ』、マリモで最も近縁な『タテヤママリモ』。これに共通していることは、それまでマリモが球になるということは、「マリモだから」だとか「何かの偶然だろう」で済まされていましたが、マリモの家系が共有している性質である。遺伝的に支配された何かが球化するためのバックグラウンドになっていることがこれから推定されます。そうすると「このメンバーに共通しているものはどのような性質ですか？」という問い掛けをすると、例えば球を作ると同じ状態で何年も過ごさなければいけませんから、『多年性』といって１年で種を出して枯れてしまうのではなくて、何年も居続けなければならない。或いは、球を作ると内側は真っ暗になってしまいますから、普通の植物であれば光が届かなくなりすぐ枯れてしまう。そうではなくて、暗がりに耐える力がある。或いは、枝分かれして、形を保つために枝分かれした体構造を持っていたり、体が固くて球を作ってもその状態を維持できる。このようなところが共通していると見ることが出来るようになりました。 　このような観点から阿寒湖の性質を見て行くと、次のことが分って来ます。まず阿寒湖というと皆さんも見慣れたこの地形図ですけれども、これは等深線が入った湖沼図です。特徴を見て行くと、湖岸が出たり入ったりしていることがわかります。それから北側と西側に入江があって、その奥が球状マリモの群生地になって来ました。それから入江から沖にかけて段々と深くなって行く様子がわかります。これは、谷の跡だと推定することが出来るのです。そして雄阿寒岳側の方の水深が大きくなる。そして島があちこちにある。このような特徴があることは以前から分っていたのです。これは何故なのか？実はこの阿寒湖の成立過程が直接関係しているのです。 阿寒湖は、いまから数十万年前に一帯の火山活動が始まって15万年ほど前に現在の阿寒カルデラ湖の真上に非常に巨大な火山が形成され爆発的な噴火を起こしています。その結果、陥没をしてクレイター湖を作る。カルデラ湖を作る。ここまでは、摩周湖や屈斜路湖と同じです。その後、周辺から南西部からフレベツ岳、風不死岳が火山活動を始めて、西側の湾の南の岸を溶岩で狭めながら作って行きます。そして、現在の阿寒川がカルデラを削って行った結果、湖の水位が下がります。ずっと下がってしまった結果、カルデラの中に川が出来ました。それが先ほど湖沼図で見ていただいた谷の跡になります。最後に湖の真ん中から雄阿寒岳が噴出して、溶岩で内側を幾つかをせき止めた。その結果再び入口を塞いで水が溜まり現在の阿寒湖やペンケ沼やパンケ沼という大小様々な湖が作られました。従って、このような噴火の歴史の中で球状マリモが生まれる遠浅の湾が形成されて来たということになります。 従って、このような経過の中で『底質』といいますけれども湖底の状態も多様になって来ます。地域ごとに湖底の状態が違い、川が入り込むところは、砂が運ばれるので砂が遠浅の湖底を作る素材になる。それから、やや深くなると泥っぽくなる。或いは東の火山・雄阿寒岳の麓は、火砕流で運搬された溶岩が積み重なっているという状態にあります。これがマリモの生活状態を決める一番大きな理由のひとつになっていて、砂が多いところは、マリモが回転しやすい環境になるので、球状のものを作る場所になります。或いは、溶岩や砂礫があるところは、くっつくものがあるので、そこでは岩に付いた苔のようなマリモになります。泥が多いところでは、付着するものがないので綿屑状のものになるのです。ですから阿寒湖では、地形だけではなく、流入河川や湖水の流れ等がマリモの形態を多様化させる要因になっています。 もうひとつ重要なことは、波です。阿寒湖では以前から、マリモが転がって丸くなると言われていますが、実際に波で動くときはこのように揺れます。これはマリモの比重が水に近いので、水が動くと同時にマリモがスイングするように動きます。時々、お互いがぶつかって、少し位置を変えて回転をする。このように満遍なく光を浴びて徐々に球状になって行きます。ここで注意をしていただきたいことは、この下の小さい俵状のマリモがありますが、これは大きなマリモが壊れて生じた断片から再生しつつあるもので、この中から巨大な球状のマリモが生成して来るということが阿寒湖の特徴です。 ここで重要なことは、こちらに雄阿寒岳、こちらに風不死岳があるので、阿寒湖に吹き込む風は、結果、谷になっていますので、南から吹いた風はこの間を吹き抜ける形で北へ抜けて行きます。ですから卓越する南風がいつもこの北の球状マリモ、或いは西に抜けた場合にはこの西の湾のマリモを動かします。このとき波の大きさを決める要因は、風の強さプラスこの湖面距離ですけれども、阿寒湖では約4.5�qあります。風速20ｍまでの風であれば、マリモが最もよく動く条件が湖面距離から生まれて来ます。言い換えると、阿寒湖はマリモを大きくスイングさせるための駆動装置としての役割を持っています。大き過ぎても小さ過ぎても駄目で、このサイズで初めて球状マリモが大きく動かされることになります。 もうひとつは、かん養水源ですが、よく「マリモは野球ボールになるまで150年掛かる」といわれます。私が研究を始めたころも「マリモはなかなか育たないよ」ということが半ば常識となっていましたが、マリモは、住んでいる湖の水を使っても育てても育ちません。ところが、海水をほんの少し入れると良く育ちます。そういう現象が研究の初めに分りました。考えて見れば、マリモは釧路湿原にもいます。たかだか釧路湿原は3000年位前までは内湾だったことを、釧路に住んでいる方なら皆さん知っている話しです。つまり、元々海だったところにマリモが住んでいるという観点で、育てる条件を調べて見ると、海水が入る。では「湖の中はどうなのだろう」と調べてみると雄阿寒岳の方からは、『ナトリウム』や『マグネシウム』を含んだ海の成分に近い温泉がもたらされている。それから外輪山の方からは、雨水に近い成分。阿寒湖温泉がある雌阿寒岳系は、硫化水素や硫酸イオンを含む温泉が出ています。よく阿寒湖は「硫黄の匂いがしないから温泉街らしくない」と言われています。これは、そこが温泉地としては魅力半減かも知れませんけれども、硫黄が入ってしますと、私たち酸素を使って生きる生物にとっては"毒"なので、大型生物が育ちません。硫黄が含まれていないこちら側の雄阿寒岳から入ってくる海水に近い中性で単純な性質を持ったものが、温泉があって植物としてのマリモが育つ条件となります。そのような観点で調べて行くと、この群生地の直下から、雄阿寒岳系の性質を持った湧き水がジワジワッと染み出していて、そこでマリモが育っていることが確認されました。 駆け足だったのですが、阿寒の自然は"森"と"火山"と"湖"が代表されているけれども、実際はもっと複雑で、地形や湖底の水質、遠浅の湾、波を起こすための風、或いは湖湾の形、温泉水等いろいろなものがひとつひとつ重なり、全て揃った時に、初めて球状マリモが生まれるということが、いま言えるようになりました。 ここまでの話しが分ったときに、環境省が「もしかするとこれは世界遺産に良いかも」という話しになりました。 ご承知のように『世界自然遺産』とは、最近富士山が登録された『文化遺産』と『自然遺産』、このふたつが合わせられた『複合遺産』がある。いずれにしてもこの『自然遺産』に登録されるには、世界でナンバー１。よく言われる言い方では、『顕著で普遍的な価値』があるかどうかによって判定される訳です。その対象としては、マリモという生物は対象外です。生き物は対象とならず、『不動産』『地形』『地質』、或いはそこに成立している『生態系』、或いはその場所が『絶滅の恐れがある動植物の生息地』になっているかどうか、このようなことが評価の対象となります。 その評価基準には幾つか要素があると言いましたが、実際にはこの４つとなります。『世界自然遺産の登録基準』、一般には、『クライテリア』という呼び方をしますが、このうち１番から６番までは『文化遺産』対象で、７番から10番が『自然遺産』対象の条件となります。1つは、『自然景観』、２つ目が『地形や地質』、３つ目が『生態系』、最後が『生物多様性』。このいずれかが世界でナンバー１である必要がある。 では、阿寒湖の自然をどのように説明をすればいいのだろう。今ままでそのような問い掛けをされたことがなかったので、我が国にはいま４つ自然があります。『屋久島』『白神山地』『知床』『小笠原』、これはどのように説明をされて来たかを調べて見ると、共通性があります。１つは、このアイスクリームの絵を見ていただきたいのですけれども、ベース・基礎となる生態的な特性があります。ここで非常に教科書的な現象が見られて、尚かつトッピングとして、その自然を象徴する自然現象や生物がある。 例えば『屋久島』を例に例えると、屋久島は、南海の亜熱帯にある島ですけれども、海抜０ｍならば亜熱帯の森林が広がっているのです。それが、どんどん標高が高くなって行くと、亜熱帯から温帯、亜寒帯と植生が変わって行きます。いわゆる『植物の垂直分布』を教科書で見るようなことが屋久島に行くと「そこにその自然がありますよ」という作りがあって、これを象徴する生物として『屋久杉』がある。このようなロジックになっています。 「そのような観点で阿寒湖を見てみよう」と昨年の終わりから進んでいます。少なくとも先ほど見ていただいたように、阿寒湖の非常に特異な自然形態があり、そこで初めて球状マリモが生まれるというストーリーは出来ましたから、マリモが阿寒湖を象徴する生物であることは疑いがない。すると、先にトッピング出来てしまったことになります。 では、アイスクリームはどうなのか？ということで改めて見ると、実はアイスクリームがありました。それはなにか、阿寒湖の上流には、たくさんの湖沼があります。この湖沼とは、先ほど見ていただいた漫画絵で、同じ時代、いまから１万年ほど前に雄阿寒岳の噴火で一斉に出来た湖です。時代と元々の水系を同じにしながら、いろいろなタイプの湖に進化して行く、遷移して行く様子が見られるのではないか？　するとこれは、湖の生態学で『陸水学』といいますが、そこでいう『湖沼遷移のまさしく実験場』で、しかも阿寒湖の東側は、ほとんど手つかずの原生林が残っている。これは非常に有利な様相です。もうひとつ条件があり、自然遺産の対象物件となるためには、おおよそ50ｋ�uの面積が最低でも必要だろうと言われています。阿寒湖のエリアだけだと30ｋ�u位しかなく足りません。そのエリア拡大のためにも、この『湖沼群』全体を対象とすることは必要な条件でもありました。 いままでに分かっている湖の環境に関する情報を整理すると、『湖沼』『沼沢』『湿地』という全ての『ウエットランドの遷移系列』があり、しかも栄養分も貧栄養から富栄養そして腐植栄養といろいろなタイプの水環境があるとことが分っています。「これが全て１セットでデータが揃って来ると、阿寒の湖は湖沼遷移の実験場であり、いろいろな段階に水質が変化して行った中で、淡水生態系が変化する実験場として位置付けられるだろう」ということで、いま残った部分を含めて調査が行われている最中です。 「マリモが生息するために塩分を含んだ温泉が必要だった」というお話しをしましたが、いまお話しした栄養段階だけではなく、塩分を含んだ環境の有無、或いは温泉があるということで水温の高い低いが出て来ます。このような特異な環境が揃っているということは、そこに非常に多様な生物群が成立する可能性を示す訳ですけれども、その証言者がボチボチ見つかって来ています。これは何の変哲もない水コケの上に生えて灰色に見えますけれども、これは紅藻類の仲間です。海苔等のグループになりますが、おおいそうといいます。関東までしか分布がありません。阿寒湖は飛び地でこのおおいそうがあり、元々南にいた生物が地球温暖化した時、ここまで分布を広げていた生き残りが、阿寒の湖の中に局地的に生存を続けていると解釈出来ますので、そうすると阿寒湖にはこのような『温暖要素』、マリモは典型的な『北方系の植物』です。本来、阿寒湖は海と繋がった歴史がありませんが、奇跡的な環境がある。海水と水が交わる環境があり、このようなところに出て来る生物が見つかっている。このような点でも生物の住む地域としては、多元な条件を備えているのがこの湖沼地帯だと見ることが出来ます。 いまこのアイスクリーム、特に下の部分ですけれども一部は報道等で最近出ていますが、湖沼調査が進んでいて今年中には、この全体像のベースのところが見えて来るだろうと期待をしているところです。 先ほどの『謙虚で普遍的な価値』があるかを、これから科学的に証明をして行くことになります。 一方で、私が何故これに関わるのかといいますと、世界自然遺産に登録されれば最も厳しいレベルでこの阿寒の地域の自然が保全されることとなりますので、マリモにとっては最も好ましいことである。マリモ研究の仕上げとしては最高のゴールであると言えます。 非常に駆け足でしたが、いま、市ではこの『世界自然遺産登録』に向けて全庁的に取り組みを進めているところです。８月には、400名の市民の皆さんが国際交流センターに集まり、シンポジウムを開く等いろいろな活動が展開されて来ています。 今年、どうやら国が設置する選考委員会は開かれない。実は『世界自然遺産』の候補として載っていますが、決まっていない案件として『琉球・奄美』があります。これがいまゴタゴタしています。尖閣の問題もあり、なかなか進まない中で、新規のものは後回しになっている状況です。恐らく来年には、この委員会が開かれて、最終的に阿寒が残るかどうかが決定されるだろうと期待をしているところです。 本当に駆け足でしたが、『世界自然遺産を巡る阿寒湖とマリモの状況』をご紹介させていただきました。本日は、どうもありがとうございました。


会長謝辞　吉田　秀俊　会長

　若菜先生、本日は大変お忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。私も阿寒町生まれで、マリモのことを自分では知っていると思っていましたが、全く知らない部分で間違えて覚えていた部分がたくさんありまして本日は目から鱗…。 （音声途切れ・Ａ面終了）

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ニコニコ献金

お名前（敬称略）	内　　　　　　　　容
白幡　博	この度、長男、慎太郎と五明家長女、早紀の披露宴に際し皆様よりお祝いと温かいお言葉を戴き、感謝とお礼を申し上げます。
五明　正吉	先日の娘の結婚式には大変お世話になりました。白幡会員共々宜しくお願い致します。
栗林　延次	息子が結婚しました。
舟木　博	秋のお遍路、台風に追われながら無事に終了いたしました。
竹内　巌	短い間でしたが、大変お世話になりました。ススキノでお待ちしております。
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