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釧路日台親善協会
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2014-2015釧路ロータリークラブ 第34回(通算3352回)例会
会長の時間
会長挨拶 田中 正己 会長
皆さん、こんにちは。先週の7日、釧路センチュリーキャッスルホテルで『国際ロータリー第2500地区・第7分区インターシティミーティング』が開催され、会員の皆さま方には大変お忙しい中、多数のご出席をいただきましてありがとうございました。
また当クラブから、次年度、白幡ガバナー補佐を輩出することになりました。これから準備を進めて参りたいと思いますのでよろしくお願いをいたします。
お話しが変りますが、3月9日~15日は、『世界ローターアクト週間』です。そのことについて少しお話しをしたいと思います。既にご存じの方はおさらいのつもりで聞いていただきたいと思います。
ローターアクトは、地元や海外での奉仕活動に関心があり、18歳~30歳までの青年男女のためのクラブです。1968年3月13日に、世界で初めてノースシャーロットローターアクトクラブ・RACが設立されました。現在、世界には、7,000を超えるローターアクトがあり、その会員は約17万人に上ります。大学、または地域社会を基盤とするローターアクトクラブは地元のロータリークラブによって提唱され、サポートを受けますが、それぞれ独立して運営しています。ローターアクトクラブとロータリークラブは、奉仕のパートナーとしてロータリー家族の重要な一員となっています。ローターアクトを卒業した後は、ロータリークラブへ入会をすることが推奨されています。『アクトの日』とは〝アク〟が9で〝ト〟が10。ちなみに、9月10日前後の休日を中心に日本全国で様々な活動が行われている日です。ローターアクトの週間意識を高め、ローターアクトを広告することを目的としております。
第7分区では、釧路北ローターアクトクラブは会員数が19名で、月に2回の例会活動を通じて親睦と修練、及び奉仕活動を頑張っていただいております。
このあと、三好講師から『認知症について知っておきたいこと』のご講演をいただきますのでよろしくお願いいたします。
会長挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。
本日のプログラム
認知症について知っておきたいこと
プログラム委員会 委員長 中山 峰啓 会員
本日のプログラムは、『認知症について知っておきたいこと』です。講師の先生をご紹介いたします。三好先生は、釧路北病院で医師をされています。先生は、主に病棟の方におられまして、月曜・火曜は『物忘れ外来』におられることもあるということです。もし認知症の心配があったときは、その日をめがけて行くと先生にお会い出来ると思います。
私も実は、糖尿の気があって、糖尿と認知症は非常に密接な関係があるということで、私ためのプログラムでもあると思います。私も胸にしっかり受け止めて聴いておきたいと思います。
三好先生よろしくお願いいたします。
医療法人豊慈会 釧路北病院 三好 克枝 先生
皆さん、こんにちは。本日はこのような歴史、かつ名誉ある会に、壇上でお話しをさせていただく機会をいただきまして、中山様をはじめ、会員の皆さまに心よりお礼を申し上げます。少々緊張で早口になっておりますが、一応、私は『認知症学会の専門医』という資格を持っておりますけれども、現在は、一介の勤務医として釧路北病院で4年前から働いております。
皆さまにお配りした認知症についてのパンフレットは、お薬屋さんが主に作っているもので、認知症の原因になる病気について、その特徴やこのようなときに気付いて欲しいという内容が書いてあると思います。本日はそのような認知症の各論のお話しをするのではなく、私が療養病床に勤務した中で、認知症診療について感じたこと、考えたことについてまとめてお話しさせていただくつもりでございます。
まず初めに、少々政治的なお話しになりますが、最近、なぜ、テレビ・マスコミ等で認知症が取り上げられているのかについて簡単に振り返ってみたいと思います。
一昨年ですが、厚生労働省の研究班の報告から「65歳以上の3人に1人は認知症患者さん。そして、その予備軍」と報告されました。予備軍とは、認知症と診断はされないけれども、それに準じた多少の認知機能の低下がある方ということです。夫婦、そして両親が共に生きているご家族であれば、家族に1人や2人は必ず認知機能の低下した方がいる計算となります。現在、440万人がいると思われる認知症の患者さんが、2025年には700万人にまで増加するという報告が、今年出されました。700万人といいますと、香港の人口、スイス1国の人口に当たる人数で、かなりの大人数になることになります。
この2025年ですが、この年には、現在〝団塊の世代〟といわれる世代の最後の一群が75歳以上の後期高齢者を迎えます。そのときには、医療費や介護費がこのようにGDPの伸び率を大きく上回るように増加すると報告が出されています。要するに国家として医療を支えていけなくなるかも知れないという事態なのです。
世界的に見ても、医療費に占める認知症患者さんの割合が70%、また認知症患者さんの6割の方は中低所得者の方ということで、国際的な問題になっています。一昨年ですが、G8の参加国で『G8・認知症サミット』が開かれました。この中で、医療・環境、何より経済状況をどうするのかということが話し合われました。そのなかで日本は、この「新しいケアと予防のモデルのイノベーションを構築する」という役割を得ました。早速、昨年11月、東京でこの後継イベントが開催されました。
そこで、テレビにも出ましたが、「政府一丸となってこの問題に取り組んでいきたい」と言われて、その後に発表されたのが、この『認知症国家戦略』(新オレンジプラン)となります。“新”ですから、元々“旧”があったのですけれども、新旧を合わせて目指すところは、「認知症になっても、心、身体も健康に。入院をせず住み続けられる地域・街作り・環境作りをみんなで目指そう」ということになる訳です。
ここで、簡単な自己紹介ですが、私は福岡県北九州の出身で、太鼓の音を聞くと血が沸くタイプの人間ですが、私が高校生のときに祖父が認知症を発症しました。「このような認知症の患者さんと向き合うような仕事がしたい」と高校3年の夏に、急遽思い立って医学部を志すことになった訳です。神話の里の宮崎で何とか資格を得ることに成功しました。その後、地元の福岡に戻り、九州大学病院の神経内科に入局しました。こちらで、この度愛媛大学の教授になられました大八木保政(おおやぎやすまさ)先生との出会いもあって、認知症の基礎研究から物忘れ外来などの仕事をさせていただく経験を得て、市中病院等でも働いていました。4年ほど前に、人生を1回リセットしたくなり、釧路北病院へやって参りました。
その釧路北病院については、皆さんの方がよくご存じだと思いますけれども、医院長以下、計9名の医師で診療を行っております。244床、全て個室という全国でも珍しい療養型の病院です。この療養型というのは、医学的に見て「長期に入院・療養が必要だと認められる患者さん」、または「元々持っている持病が軽度悪化をして緊急的処置で入院をされる患者さん」、「病後の回復期であったり難病で長期にリハビリが必要な患者さん」の方々のリハビリを行う病床群となっています。施設内に特別養護老人ホームなどの関連施設もあります。
一昨年になりますが、入院患者さんについて調査を行う機会があったのでそれをまとめたグラフを示します。少々見えにくいですけれども、入院される方のほとんどは、大きい基幹病院(労災病院・市立病院さんなど)からの転院、他の病院の先生からご紹介いただく患者さんのほとんどは施設入居者で、平均年齢83歳となり、高齢の方がメインとなっています。
2番目のグラフですが、この『長谷川式認知症スケール』というテストですが、これは主に記憶力をチェックするために行うテストで、認知症の診断にもよく用いられます。「今日は何日ですか」「野菜の名前を言って下さい」などというテストです。これが、「20点を切ると認知症の疑いがある」と診断をされるのですが、入院をされた患者さんのほとんどの方は20点以下、4割の方は検査が出来るほどの認知機能も残っていない状況でした。
いわゆる認知症に分類される方がどのような契機で入院をされているかというと、大半が肺炎やご飯が食べられなくなって脱水になったという状況でした。ご飯が食べられなくなるくらい身体が弱っている、もしくは認知機能障害が進行している。どうしてそのような状況になっているか、認知機能の低下の原因は何だろうかを調べてみると、勿論半分の方は、認知症という診断名がついていましたが、不明の方が30%近くいました。要するに、どのような経過で寝たきりになっているのかが病歴上では分からないという事態でした。
この結果を受けて、15年前から認知症診療に関わっている自分としては、亡くなっている祖父を思い出したこともあるかと思いますけれども、かなりの衝撃を受けました。
ここで、認知症という言葉について少々振り返ってみたいと思います。2004年に、『痴呆症』から『認知症』へと言葉が変えられました。痴呆の痴は、白痴の痴。呆は、呆けるということで、かなり差別的意味合いが強いということで変えられたものと思いますが、認知症の末期の患者さんを表現する方法としては〝痴呆〟でもイメージとしては沸きやすいかも知れません。ただ、非常に差別的だということです。この認知症を題材とした映画もたくさん作られています。皆さんも観たことがある映画もたくさんあると思いますが、この題材のほとんどの主人公は『アルツハイマー病』、もしくは『アルツハイマー型認知症』という病気がテーマになっています。あまりにもアルツハイマー病のイメージが世間に定着してしまった結果、認知症=アルツハイマー病=治らない。また、15~20年くらい以前に、アルツハイマー型認知症の脳に『アミロイドβ(ベータ)』というタンパク質が溜まっているということが分かりました。このアミロイドβタンパクを分解するお薬を作ろう。脳の中で減少しているアセチルコリンという神経伝達物質を増やすお薬を使うと進行が2~3年遅くなる。そのために、早期発見して早期治療を開始しよう。また、一旦進んでしまったら直らないから、あまり無理せず頑張らず気持ちよく過ごしてもらおう、そのようなケアを充実させよう、ということがほんの数年前までの世の中の流れでしたが、この認識は少々間違っています。
まず、認知症という言葉ですが、認知症というと〝うつ〟や〝適応障害〟のような精神疾患の病名として使う場合もありますが、同じく認知機能が低下しているという『状態・症状』を表す意味でもあるのです。この認知機能とは何かというと、喋る・聞く・味わうという五感の刺激を脳が受けて、それをいままで得た知識や経験から判断をして次の行動に移す。要するに〝自分〟という個人商店のマネージメント、もしくは社長業のようなことを行う。これが認知機能です。
これが障害されてしまうと、当然ですが、いままで当たり前のように出来ていたことが出来なくなってしまう。また、人が変ってしまったかのように性格や嗜好が変ってしまう。見ているもの、聞えているものも、他の人とは違って見える・聞える。更に進行すると、何もやる気をなくす。「よく寝ている」という開店休業のような状況になってしまう訳です。
この認知機能が低下する原因については、スライドに上げているものが考えられます。 最大のリスクファクターは加齢。そして、生活不活発病。これは、昨日で4年目を迎えましたが、震災時に仮設住宅や避難所で長く安静を余儀なくされた高齢者の方が血栓を起こしたり、心肺機能が悪化して寝たきりになったり、亡くなるということで、かなり問題になった症状です。加えて病気によるものがあげられます。およそ体中のありとあらゆる臓器の病気は、認知機能に影響を与えると言っても間違いではありません。それ以外に、一番下に『せん妄』と書いてありますが、これは急に病気になったり、急に環境が変ったときに一時的にパニックになるようなイメージで捉えていただければよいかと思います。
このようなありとあらゆる認知機能が低下する要因の中で、病気によるものの一番最初の脳の病気で、かつ治療が出来ない、原因がはっきり分かっていないものの中で一番多いものが『アルツハイマー型認知症』という病気です。それ以外にも『レビー小体型認知症』や『血管性認知症』などの病気が原因として上げられています。これらを『4大認知症』と言われています。
ただ、この下に『若年性認知症』と65歳未満の方を分けて書いてあります。高齢で発症される方は、このような幾つかの病気が混合して、それ以外の身体の病気も混合しているので、なかなか認知症と言っても「これ1つが原因ですよ」と断定をすることが難しい訳です。一方、若くして発症される方は、それぞれの病気の特徴を持って、しかも高齢の方よりも早く病気が進行してしまうために若年性認知症と分けて考えることになっています。
ということから、認知症が見つかったら、認知機能の低下が見つかったら、どのように治療を行うかという話になると、直せるものを探して直すこと。加齢によって弱っていれば自分で努力をしましょう。もし他に何か病気があればその治療をして再発や進行の予防をしましょう。という話になります。
逆に、4大認知症のような直せない病気であったらどうしようかということでは、それにきちんと向き合いましょう。例えば、生活不活発病が合併することによって病気の進行を押さえましょう。そのために、患者さんが安心して療養に取り組める環境作りをしましょう。もしくは、公的な介護保険などや色々な民間サービスを導入して生活を安定させましょう。ということになる訳です。
よく「認知症のお薬を早めに飲みましょう」と言われますけれども、認知症のお薬自体、もしくはそれに伴う〝うつ〟や“不安”に対するお薬も、いまある認知機能にアクセルを踏んだりブレーキをかけるような作用しか持っていませんので、だいぶ認知機能障害が進んでいる人に認知症のお薬を使うと、かえって幻覚が強くなったり興奮が増すことがありますので、薬物療法と付き合うときには注意が必要です。
認知症の早期発見・早期診断とは、決して治療薬を早く使いましょうということではなく、直せる病気はしっかり見つけよう。もし直せないのであれば、その病気としっかり向き合う覚悟をみんなで決めましょう。そのために、早期発見・早期治療が必要。と理解されるといいかと思います。
ここで、入院中の患者さんの一例をご紹介したいと思います。この方ご本人の承諾を得て、こちらにビデオを載せています。この方は、呼吸不全、肺の病気が悪くなり酸素の投与が必要となり入院された方です。この方は、入院をされたときの記憶力のテストが21~22点ですから、ちょうど境界領域くらいの方でした。その方が少し酸素も必要なくなり、落ち着いて点数も少し回復傾向にあると思ったところで、足の血の巡りが悪くなってしまい、足に潰瘍が出来たりしてベッドに寝ている時間が増えるという状態を余儀なくされました。そうなると、点数が13点と下がっていますが、このころには「壁に虫がいる」といって壁紙を剥がしたり、他の患者さんの部屋へ入ったり等と、いわゆる認知症のような症状が見られています。その足の病気の治療のため、入退院を繰り返していましたが、結局、足を切断せざる得なくなり、片足を切断して帰って来られたときには、記憶力のテストは1点で、ほとんど“高度の認知症”という状況になっています。お話しをすれば普通にお話しも出来ますが、発言の内容が抑うつ的だったり、「切られた足の先が痛い、どうにかしてくれ」と毎日毎日繰り返し言っている方です。そのようなことで様子を見ていたところ、今年になって「最近、彼女が元気だ」ということから、ではテストを行って見ましょうかと同じ記憶力テストを行ったところ、20点に復活をしていました。彼女がその20点を叩き出したときの笑顔がこれです。
手前にあるのが、最近、彼女が仕事として行って下さっているタオルたたみのお手伝いです。もう1つ、この間、病棟の患者さんのカラオケ好きの方達で〝車椅子合唱団〟というサークル活動を開始しました。月2回、カラオケのマイクを病棟のテレビにつないで、みんなで歌を歌っていますけれども、彼女はそのような活動・交流を開始しました。その結果かどうかは分かりませんが、明らかに、このように記憶力も回復しています。「何かやりたいことはありますか」という質問に、「恋でも出来ればね。でも、この辺のお爺さんじゃ、ちょっとね」とおっしゃっています。
この生活不活発病ですが、これは元々、病気や怪我のために安静にしないといけない、もしくは、先ほどの震災の話にもありましたが、環境の変化、転ぶと危ない、ということから環境に配慮して安静にする。ただ、安静にし過ぎると筋肉や骨の運動機能が低下する、いわゆる“ロコモティブシンドローム”ですが、それに加えて認知機能も低下してしまう。その結果、動きが鈍くなって活動性も悪くなり、更にその結果、身体能力が低下して意欲も落ちる。この悪循環が起こってしまうことがこの生活不活発病です。治療可能な認知症といわれている病気の大半は、この生活不活発病による元々の病気の悪化と考えられます。認知症、もしくはその認知症の進行予防治療のためには、この生活不活発病に十分留意することが必要と考えられます。
もう1つ、この患者さんに見られた幻覚や徘徊などの症状、他にも、不安や昼夜逆転、怒りっぽい、そのような認知症に伴う症状が見られますが、これは認知機能の低下が中心にあって、その結果、見られる症状ということで、周辺症状、英語の頭文字を取って〝BPSD〟と呼ばれています。このBPSDですけれども、職員さんに色々とアンケートを取った結果、「怒りっぽい・興奮し易い・幻覚が見える・ちょっと触るとすぐピクピクする、いわゆる“易刺激性”、このような症状が、対応に非常に苦慮する」というアンケート結果が出ています。それは当然のことで、お風呂に入れようとしたら、嫌がられて叩かれる。幻覚のせいで騒いでいると周りの患者さんにもご迷惑が掛かるということで、ご本人および他の患者さんの療養環境が保てないことが大きな理由だと思います。
このような症状は、認知症の病気の中でも初期から中期まで幅広く見られる症状ですが、この周辺症状がなぜ起こるかということを考えてみたときに、幻覚というものは認知機能障害の症状ですから、ないものが見える・聞えることは仕方ないことですが、見えるものが変っている、聞えるものが違っている、そして記憶力が低下して更にそれを是正するための昔の記憶もないということになると、間違った情報をそのまま頭の中に記憶してしまいます。それをそのまま忘れてくれれば良いですけれども、脳はどのような状況でもとりあえず記憶を作ってしまうことを日常的に行っていますので、そのような間違った思い込みを本人が確信します。そして、それを周りに否定されても、本人は「それが当然だ」と思っていますから是正しないことで、周りからは“妄想”扱いされてしまうと、本人は「じゃ自分は一体どう何だろう。自分が見えている生き物は一体何だろう」という気分になって非常に不安になる。それで、その不安を打ち消すために、怒る・興奮する・暴力を振るうことによって、その不安や恐怖心を何とか克服しようとする。もしくは、安心出来る居場所探し、昔、安心出来ていた田舎などの居場所を探して不安を解消しようとする。もしくは、お腹を満たしてストレスを解消しようとする。何を行ってももう無駄だとなれば、完全に無気力になってしまう。全てが全てこの経過という訳ではありませんが、このような経過が見られる訳です。
要するに入口は、認知機能の低下によって確かに間違っていますが、その後に起こる様々な周辺症状というものは、人間として、動物として当然の反応だと考えることも出来る訳です。
ここで、若年性認知症の話を少しさせていただきたいと思います。若年性認知症とは、64歳以下の方を対象にいわれる言葉です。大体、有病率が10万人に47.6人。釧路であれば80人位がいる計算になると思います。北海道では、771名の方がこのように診断をされていて、人口の割には少々少ないはずですので、恐らく診断されていない方がたくさんいるものと思います。
原因は主に能卒中の後遺症が多いと言われていますが、北海道では「アルツハイマー型の患者さんが半分」と言われています。このような方が発症をする時期が大体50歳ですから、ちょうど社会でも家庭でも重要で当てにされている歳なのです。このように家庭や社会で責任を果たせないことに対するストレス、配偶者や子供への心理的及び経済的影響、また高齢者向けサービスのほとんどが認知症のプログラムですので、そのような高齢者向けサービスに馴染まないなどの現状、更に、親が生きていて非常に申し訳ないということで、不安やうつ、生活習慣病のリスクが他の高齢者に比べても更に高いと言われています。
ダイアナ・フリール マクゴーウィンという方は、若くしてアルツハイマー型より血管性の認知症を患った方で、この方ご本人が書かれている『私が壊れる瞬間(とき)』という著書の中で、認知症である自分をこのように語っています。「認知症とは、迷路の危険に満ちた曲がり角や、くねった道筋を旅していくようなものです。私にも価値があるのだということを本当に分かってくれる道連れの愛情がなければどうしてこの迷路のような旅路をこれからも歩み続けていけるだろう」
また、同じように高齢者の心理学がご専門の佐藤眞一先生は、『認知症「不可解な行動」には訳がある』という本の中で、「介護をする人とは、互いに怒ったり傷ついたりしながらも基本的には、相手の思いに共感をして共に生きていくことを選んだ人」と語っています。
アルツハイマー症の患者さんを街で見かけたときに、「旅行者が仲間とはぐれて道で迷っているように見える」ということがよく言われます。このような旅人への接し方に対して、北海道には素敵な言葉があることに気が付きます。『イランカラプテ(貴方の心にそっと触れさせて下さい)』。先ほど、ロータリーソングを聴いて、このような心があればどのような方も素敵に生活が出来るだろうと思いましたが、なかなかこのような思いに至らずに孤独を抱えながら、その結果、虐待や殺人などの悲劇を生み、ご家族を介護するために“介護離職”の結果、重要な労働者人口が減ってしまうような現実もあります。
また、認知症は、その病気、その現状を理解すれば、安心することは決してよくなく、その状態でも働けること、自分でも出来ることがたくさんあります。そのような方が社会へ出てこれからも住みやすい地域を作っていくためには、そのような方に接する、その接し方として、この『イランカラプテ』という言葉がとてもピッタリではないかと思っております。
〝全ての人に心地よい街、薬になる街釧路〟ということで、これに少しでもお力になれれば幸いだなと思いながら日々診療をさせていただいております。少々時間を延長してしまいましたが、これにて発表を終らせていただきます。どうも失礼いたします。
会長謝辞
三好様、大変貴重なお話しをどうもありがとうございました。最近は、人口減少・少子高齢化、そして認知症・介護など、色々テレビや新聞等によりお話しをよく耳にしますけれども私も最近物忘れが多いので少々気になります。本日のお話しを参考にしていきたいと思います。本当に本日はありがとうございました。
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