JR北海道
釧路支社長
亀井照夫君
本日、JR北海道のお話をさせて頂くという事で、この様な機会を作って頂きまして暑くお礼申し上げます。JRモードビークルと言いまして、略して私共はDMVと言っている訳でございますけれども、どれだけ皆様方の前でお話できるか、内心熟知たる思いがございますけれども、精一杯話させてもらいます。ところで名前の由来でございます。我々はデュアルモードビークルとお話をしている訳でございますけれども、いわゆるデュアルというのは二重だとか人間的な、それからモードというのは方式、それからビークルというのは乗り物という事で、我々道路とレール両方を走行するという事でデュアルモードビークルと名付けさせて頂いております。本日は大体3つに分けてお話をさせて頂きたいと思います。1つ目はJR北海道の概要、JR北海道を取り巻く環境、次はDMVの概要、それから開発、目的、歴史的なもの、最後にその活用という事でお話をさせて頂きたいと思っております。その前にDMというのはどの様なものかという事をご理解頂きたいと思いますので、動画を3分ほどお見せしたいと思います。音は出ませんけれども、この様に鉄道の上を走っているというものであります。これは2両連結して石北線で走行試験をしているところでございます。これは石北線から降りまして女満別空港に向かっているところでございます。これで大体イメージは掴めたかと思います。
それでは最初に戻りまして当社の概要からまずお話させて頂きたいと思います。ご承知の様にJR北海道というのは国鉄の民営分割で発足した会社でございます。設立は昭和62年4月1日、社員数は現在8,756人おります。鉄道営業kmロが14線区、2499.8km、約2,500kmの営業kmでございます。当社で保有している鉄道の車輌は1,180輌、駅数は472駅でございます。そのうち人を配置しております駅が117駅ございます。旅客列車の運転km数、当社の量でございますけれども1日当たり99,491kmで列車が走っているという事でございます。それから運転本数が1日当たり1,292本、年間の旅客輸送人員が約1億2,400万人運んでいるという事でございます。続きまして先程申し上げました当社の営業kmでございます。約2,500kmというお話をさせて頂きましたが、人口希薄な北海道にあって鉄道営業kmが異常に長いという事もございまして、営業kmが1km当たり1日平均何人輸送できるかというのが輸送密度という訳でございますけれども、輸送密度がJR各社平均、いわゆる東海、東日本さんを入れた平均が1日32,962名でございます。それに対しましてJR北海道は4,869人と非常に少ない輸送になっております。この表、少し見にくいかも知れませんが500人未満から始まりまして、20,000人という形で整理をさせて頂いている訳ですが、オレンジ色のところが4,000人未満の線区でございます。それから2,000人未満、これは赤で表示されている部分でございます。それから1日平均500人未満しか乗っていないというところは残念ながら当社管内であります根室・花咲線でございます。それから釧網線、いわゆる赤の点線の部分でございます。このように低いところの鉄道が多いという事でございます。では1日輸送人員が20,000人以上というところはどこかと言いますと、本当に札幌圏の一部だけでございます。この一部が20,000人以上の輸送人員を持っている。それにしてもJR各社の平均から比べると低いという現状でございます。それで国鉄時代、8,000人以上が鉄道として維持するのに意味があると言われておりました。4,000人から8,000人というところはバスで運ぶのが良いのか、それとも鉄道で運ぶのが良いのか、いわゆる境目でございます。それで4,000人未満、先程言いました赤、あるいは黒字の点線のところでありますが、これはバスに転換した方が良いと国鉄時代はその様に話が進んでおりました。そう致しますとJR北海道の鉄道の7割弱が4,000人未満の鉄道という事で、さらにその3割が500人未満という非常に苦しい状況になっているというのがご理解頂けるかと思います。
次に飛行機はどうかと言いますと航空便、以前は千歳空港からのみ道外に繋がっていた訳ですけれども、最近は地方空港からも道外に繋がっております。分散化がどんどん進んでおりまして千歳空港から道外へは108便、往復で飛んでおります。道内全体で見ますと147往復が飛んでいる訳でございます。従いまして39往復は千歳空港以外から本州の方へ飛行機が飛んでいるという状況になっております。従いまして道外の観光客も以前は千歳空港に入って道内観光をして、千歳空港から本州へ帰るという事でございましたけれども、最近は千歳空港から入って地方空港から帰る、あるいは地方空港から入って地方空港から帰るという事で、鉄道屋にしては非常に厳しい状況であります。
では次に幹線道路網はどうなっているかという事でございますけれども、札幌を起点と致しまして高速道路網が各地にどんどん延伸化されている訳でございます。JRが発足致しました昭和62年、この時は札幌から岩見沢、札幌から小樽、札幌から室蘭という事で、166.8kmしかございませんでした。ところが平成17年になりますと538.7kmとそうとうの延伸がなされているという事でございまして、これも当社にとっては非常に厳しい経営環境であるという事であります。これに対しまして当社としても色々手を打って参りました。何しろ都市間輸送、私共の収入の6割でございます。ですから都市間輸送の特急というのは非常に重要な役割を果たしている訳でございますけれども、1番最初にまず札幌旭川間を高速化致しました。次に札幌函館間、そして3番目が当支社管内でございます札幌釧路間、これは平成9年、これまで4時間25分掛かっておりましたのを振り子気動車を投入致しまして130km/h運転を初めて3時間40分という事で、45分の短縮を行って参りました。4番目が札幌から稚内に向けて、旭川名寄間を高速化したという事であります。そして5番目が海峡線、いわゆる函館から青森へ向けて、これは平成14年12月に八戸盛岡間の新幹線開業に合わせて新車輌を投入して高速化を図ったという事でございます。当社と致しましてはこれで道内の高速化はほぼ完了したかと考えております。
それでは本題のデュアルモードビークルに入らせて頂きます。先程動画を見て頂きましたのでおおよその概況は掴めたかと思います。まず開発のねらい、目的でございます。先程も申しました様にJR北海道の鉄道営業km、約2,500kmであります。その3割に当たる約800kmが1日平均輸送人員500人未満と極めて利用人員の少ない線区でございます。この様にJR北海道が管轄しております鉄道というのは、JR発足後も年々減少を続けているというのが現状でございます。この様な状況に対しまして地方交通線の経営改善の施策も当社としては打ち出して参りました。一つはワンマン化でございます。それから運輸営業所も新設致しました。それから一部駅業務等を委託して参りました。それから一部地方交通線のバス転換も図って参りました。しかしながらこの様な運営を続けて参りましたけれども、やはりコストダウンを中心とした経営改善は限界に達したという事で我々は考えております。この様な中、新たな発想を元に地方交通線の経営改善を図る手段として開発を進めてきたのがDMVでございます。その目的とねらいでございますけれども、1つはマイクロバスを活用し、中小量の乗り物としてイニシャルコスト、それからメンテナンスコストを低減する。2つめは道路も走行可能なものとし、高齢化に向けたバリアフリー化、地域の活性化にも貢献する。3番目がレール等の地上のインフラを有効に活用しつつ、GPS、人工衛星を使って高精度の位置を確認するものです。カーナビと思えば大体、その高精度のものと思えば良いかと思いますが、その様なものも活用致しましてコストを下げていくという事で検討して参りました。ちなみにその発想そのものはどうだったかと言いますと実は発想そのものは70年前からございました。レールと道路の両方を走る事が出来る乗り物と致しましてイギリス、ドイツ、オーストラリアで開発が試みられて参りました。日本でも国鉄時代に地方交通線のコストを下げる為に挑戦して参りましたが、残念ながらいずれも実用化できなかったというのが現状でございます。原因と致しましてはバスをレールで走らせる為には大きな課題がございました。1つは道路とレールの相互のモードチェンジをする時間の短縮。2つめはゴムタイヤの寿命の問題。3つめは走行時の安定性の問題。これらが解決できなかった為にこれまで実現をしなかったという訳であります。では私共の開発しておりますDMVのシステムと言いますのは、マイクロバスをベースにして道路とレールをどちらも走行可能な車輌にするという事であります。市販のマイクロバスを改造して走るという事でございまして、道路を走るときはバスと同様に走行致します。レール上を走行する時は前後の鉄車輪を自重で降ろして、レールの上で油圧により自重で降ろした前後の鉄車輪に加重を掛け、前のゴムタイヤを上げて走行致します。前後の鉄車輪は車輌がレールから逸脱しない為の大動輪の役目を果たしております。レールと道路といずれを走行する場合も駆動輪、エンジンはマイクロバスの後ろのゴムタイヤ、これが駆動輪になります。ではレールと道路のモードチェンジをする仕組みでございますけれども、一応当社では三角ガイド、鉄車輪ガイド式という様な言い方をしている訳でございますけれども、前後の鉄車輪を移す車輌のセンター、これは車輌の中心についている訳でございますけれども、センターに取り付けられたカメラで車内モニターに表示された中心部と、それからカメラを通して見た地上部の方に引かれた中央線が合うように、運転手が確認しながらそのモードチェンジ部に入っていくという事でございます。おおよその位置合わせをしていけば後は三角のガイド輪になっていますから、そのままずっと入っていきますとレールの上に乗っていくという仕組みでございます。降りるときは逆にこの様な事は必要ございませんので先程動画で見て頂いた通り、レールから道路に出るときはレールに乗る時の様に車輌とレールの位置合わせをする必要がございませんから、踏切の様な平らな場所で前のゴムタイヤを降ろして、鉄道車輪を油圧で上昇させ、簡単に降りていくという事ができるものであります。
次に緒言と言いましょうか、デュアルモードと鉄道の車輌を比較したものでございますけれども、デュアルモードの走行時にはゴムタイヤで走ります。それから鉄道の上に乗った場合には先程言ったゴムタイヤと鉄車輪でガイドしながら走ります。もちろん鉄道は鉄車輪であります。最高速度につきましてはデュアルモードビークルの方は当然道路を走るときは道路標識によって走ります。軌道、レールの上に乗りますと約70km/h。鉄道の場合は約95km/h、これはキハ40(ヨンマル)と言いましてワンマン車輌の規格でございます。ワンマン車輌であれば95km/hという様になって参ります。それから旅客定員、これが最大の、うちで言えば欠点になる訳ですけれども、鉄道であれば約90名でございますけれども、このデュアルモードになってくると28名しか運べないという事で、輸送人員が非常に厳しいと思っております。車輌総重量、車輌でありますと約40tでありますけれども、このデュアルモードであれば約6tという事で7分の1で済むという事が言えます。それから先程言いましたレールと道路の乗り降りでございますけれども、レールに乗る時には大体15秒でレールに乗る事ができます。降りる時には先程見て頂きましたけれども踏切の様なところから約10秒でさっと降りていきます。レールと道路の時間の短縮がやはり大きな課題であったという様に思っております。あとは適応される法令が当然道路を走行する時には道路交通法でございますし、軌道の上を走るという事になれば鉄道法または軌道法、鉄道の場合は鉄道法の規制を受けるという具合になっております。
次にコストの比較でございます。デュアルモードビークルもそれから鉄道車輌も主要設備は現行の設備を活用できると思っております。車輌の購入費でございますけれども先程の鉄道車輌であれば1輌約1億3,000万円掛かって参りますけれども、デュアルモードであれば2,000万円という事で7分の1のコストで済むという事であります。それから燃料消費量でございますけれども、鉄道車輌でありますと1L当たり4kmしか走りませんが、デュアルモードビークルの方でございますと1L6kmという事で4分の1のランニングコストの削減ができるのではないかと考えております。それから定期検査でございますけれども定期検査は車輌1輌で年間440万円ほど掛かりますが、これも推計でございますけれどもデュアルモードですと年間55万円くらいで済むだろうと。それからレールも消耗いたしますけれども修繕費の頻度、鉄道車輌であればやはり数年に1回は大きな修繕を行いますけれども、デュアルモードであれば重量が無いですから軽度な修繕で済むだろうという様に思われております。
次に活用を考える上でのデュアルモードビークルの特性と活用という事でお話をさせて頂きたいと思います。この様に開発して参った訳でございますけれども、今度は活用という点で考える上でDMVの特性と特徴を見て行きたいと思います。まず特区の有効活用という事でございます。新たなインフラ投資が必要な他の交通機関の導入と違いまして、既存のインフラが活用可能という事であります。そのために車輌購入費と合わせてインフラの軽減、さらにはランニングコストが安価であるという事があります。次に利便性、サービスの向上でございますけれども、鉄道の利点である定時制、それからバスの利点であります機動性など、鉄道とバスの利点を兼ね備えておりますので、乗り換えなしに移動が可能であり、さらにバリアフリーの利便性を図れるのではないかという様に考えております。その事から新たな需要の想像ができるであろうと。地方交通線の経営改善に留まることなく新しい交通システムとして空港へのアクセス、あるいは都市交通LRT、イメージは路面電車の最新型と思えばよろしいかと思います。札幌の市電などの様な路面電車の最新型でヨーロッパで走っている様なものをイメージして頂ければ分かると思いますけれども、その様な代替輸送として使える。あるいは鉄道が走っていないところをさらに道路を走る事によって軌道輸送の代替として使えるであろうという事を通しまして、地域の活性化に一役を担うのではないかという様に考えております。例えば空港アクセスを考えてみたいと思います。鉄道の登坂能力、山を登っていく能力でございますけれども、最大35‰(パーミル)しかございません。いわゆる1000m行って35m上がるという高さでございます。DMVでありますとほとんどバスと同じでありますから、高台に位置する各施設へのアクセスが可能という事になろうと思います。例えば女満別空港でございますと60‰ございますし、旭川空港ですと大体で67‰ございますから、鉄道では到底そこには行けないという事になりますと、アクセスする為にトンネルを掘って膨大な経費を掛けて作るのかという事になる訳でございますけれども、それはできないと。逆にデュアルモードビークルであれば鉄道から乗っていってそのまま先程言った三角ガイド方式のものがあれば空港まで行けるというものでございます。
これは旭川空港へのアクセスの例でございます。これは上川地域のDMV導入検討会議という旭川支庁が中心になってしているのでございますけれども、例えば旭川方面から鉄道で参ります。富良野線で鉄道を使いまして、西神楽、清和、ここから道路を伝って旭川空港に入って頂く。あるいは飛行機が到着しますと旭川空港からまたそのまま鉄道を通って旭川に行って頂く。逆に観光のお客様が来られた時、旭川空港から道路を通って富良野美瑛方面、ラベンダーなどが有名な富良野美瑛方面に鉄道を通って頂くという様な観光にも活用しようという考えが旭川の方では検討されている様でございます。これは最初の動画でも見ましたけれども、女満別空港でございます。やはり北見網走方面から参りまして西女満別という駅と空港は約2kmしかございません。したがいましてやはり道路を通って空港に入って頂くという様な事が女満別町の方から勉強してくれという様に要望が来ております。それから観光の活性化にも役立つのではないかという様に思われております。観光地、本州の方でいきますと、非常に道路が渋滞しております。従いましてある程度の観光地の駅までは鉄道で行って、その後の観光地についてはデュアルモードビークルの方で回って頂いて、また鉄道で帰って頂くというものを1つの活用方法として考えられるのではないかという様に思っております。その例としてえりも町などが今考えているところでございます。これは苫小牧方面から鉄道で入って参ります。そこから今度はえりも岬の方へそのまま乗り換えなしで入って頂いて、観光して頂いて、広尾に抜けてトンガリロードというところを通って、また苫小牧方面に帰って行くという様な事も色々勉強されている様でございます。その他巡回型として例えば通勤、通学の時間帯、朝は非常にラッシュになりますので、朝は渋滞を避けて鉄道で行って頂く。学校なり会社なりは時間が決まっておりますので乗って頂いて、帰りについては渋滞も比較的空いておりますし、それぞれ帰る時間帯がバラバラでございますから道路を通って帰って頂くという方法も1つあろうかと思います。それからもう1つは高齢化に向けたバリアフリー化という事でそれぞれの地域でお年寄りの方なりがございます。そうするとある都市部に参りまして、そのままその都市の中を循環、学校に行かれる方、観光、あるいは病院に行かれる方、巡回をして頂いて、またある時間になったらそれぞれ鉄道に乗ってそれぞれの地域に帰って頂くという事も色々検討されている様でございます。それからこれは鉄道の保管という事でございます。当社も色々事故がございまして、ご迷惑を掛けている訳でございますけれども、例えば通常その列車が走っている訳でございますけれども、どこかで災害が発生したという事であれば、あるところまではデュアルで来て、災害地域については道路を走って行って、また鉄道に戻って走っていくという事が考えられるのではないかと思います。逆の場合もございます。道路が災害に遭ってやられた場合にはあるところまで道路で走ってきて、その区間を鉄道で走っていってまた道路に戻るという逆の事も考えられるのではないかという様に思っております。この様に色々検討がなされておりまして、どれが良いかというのは一概に私共でも正直に言って分かりません。ただこれらをクリアする為にはまだ色々な確認しなければならない事がたくさん残っておりまして、先程申しました欠点といいましょうか、乗車定員が非常に少ないのでございます。ですから大量に運ぶという点で考えますと、少しその辺が今のところ厳しいのかという事で、先程後ろ向きにくっついていましたけれども、あの様に連結、同じ前向きに連結をする訓練をしておりますけれども、いかに乗車定員を増やして乗せるかという研究もしております。その辺もクリアしないとなかなか実用化は難しいのかという様に考えております。色々勉強していく課程で色々なアイディアが出てくればそれに合わせて我々も検討して行きたいと思っております。
頂いた時間を少し過ぎましたけれども、本当に足早の説明でお聞き苦しいところがあったかも知れませんけれども、以上で私の説明を終わらせて頂きます。どうもありがとうございました。