釧路支庁
支庁長
高 原 陽 二 氏
皆さん釧路支庁長の高原でございます。改めてよろしくお願い致します。今、北海道新聞社の人事状況をご紹介頂きましたけれども、おととい知事から電話が掛かってきまして、その話は何もしておりませんでしたので、まだ分かりません。それで早速でございますけれども、今日のお話を聞いて頂ければと思います。それで今、野村支店長さんから語障害がございましたけれども、昨年4月に着任してもうじき1年になろうかという段階で、まだまだひよっこでございます。道庁に勤務しまして概ね30年経ちましたが、前半は主に水産の仕事、後半が政策部門の仕事に携わっておりまして、これまで平成7年と平成15年と2回に亘って知事の変わり目も直に経験しております。前任は道庁企画振興部の計画室長という事で皆さんにはなじみがないかと思いますが道の総合計画や開発予算を所管しておりました。その前は堀道政最後の、そして高橋道政最後の政策室の次長として道の重点政策や知事公約などを担当しておりました。今日のテーマ、「食の安全について」という事で、昼ご飯が終わったばかりなのですけれども、晩ご飯には十分に間に合いますのでひとつ参考にして頂ければと思っております。つたない話になると思いますが、しばしおつきあいをお願い致します。
今日はまず「食」について、食べるという事についての最近の動き、考え方、この様なものを前半にお話しして、後半は時間の許す範囲になりますけれども、昨年当管内で突然クローズアップされました貝毒について、基本的なお話をQ&A方式で話させて頂きたいと思います。
初めは「食を巡る新たな動きについて」という事で、皆さん適宜手元のレジメを参考にして頂きたいのですが、北海道は今更申し上げるまでもなく日本の食料供給基地として大変重要な役割を担っている、また食料を生産する農業、あるいは水産業、こういった物が北海道の基幹産業でありまして、一次産業のみならず水産加工といった製造業やサービス業も含めて食に関する産業全般が知恵と工夫いかんによって今後観光、あるいは知的財産、この様なものと並んで北海道の経済をリードする成長産業として、さらなる飛躍も期待されております。その為にも食を巡る新たな動きや時代の流れといったものをしっかりと捉える事が関係の方々が生産活動をしたり、あるいは企業の方が戦略を立てる上で、そして我々行政が政策を検討する上でも、まずもって大変重要な事ではなかろうかと考えております。先程北海道は日本の食料供給基地と申し上げましたけれども、これは感覚的に言っている訳ではございませんので、数字ではっきりと出ております。例えば北海道の農業生産額、これは全国シェアが12%近くで2番手の千葉県を大きく離しておりますし、漁業生産額も全国シェアが16.7%とこれも2位の長崎県を大きく引き離してダントツの位置づけでございます。一次産品を加工した食料品で見ても7.8%となっておりまして、これまたトップです。ちなみに2位は愛知県です。しかしこの様な事で北海道は農業王国、水産王国と俗に言われますけれども、甘んじている訳にいかないのが現実でございます。今の日本は食べ物が溢れております。世界中から食べ物が入ってきていますし、一方で国民の胃袋は一定な訳です。人口も減って参ります。その胃袋を巡って激しい競争をしていかなければならないという事で、この競争に勝ち抜くためには消費者が求めるニーズをきちんと把握して、産地北海道としてはしっかりとした戦略を立てる事が必要となって参りまして、そのニーズとはなんと言っても食品としての安全であるという事が言えます。ここで鮭を例にとって事例紹介をしますと、皆さんご周知の通り、北海道は鮭の大産地です。その中で道東はメッカです。しかし、実際にスーパーマーケットに足を運ばれますと店頭に並んでいる鮭の産地は、実に国際色豊かでございます。まず目にはいるのが一切れ100円で山積みされておりますトラウトサーモン、これは南米地域産でございます。ノルウェー産もございます。次いで目につくのが洋銀と呼ばれるチリ産の銀鮭でございます。その他ノルウェーのアトランティックサーモン、オレンジ色のきれいな色をした鮭でございますが、これは結構良い値段がします。その他北米やロシア産の紅鮭も定番となって店頭に並んでおりまして、反面、道産品というのは驚くほど少ないというのが現実でございます。この様な輸入物はかつて北海道の北洋での春鮭鱒(はるけいそん)、そして沿岸での秋鮭、これの端境期を狙って流通していましたが、いまは年間を通しての定番となっております。国内に供給された鮭は平成16年で54万トン、このうち半分が外国からの輸入で、我が北海道産の秋鮭のシェアは36%となっております。輸入の国別ランキングはチリがダントツで、次いでノルウェー、アメリカ、ロシア、カナダが続いております。ところで日本の市場を席巻するチリやノルウェーの鮭というのは実は養殖物でございます。含有脂肪分や色合い、肉質は日本人の好みに合わせて、養殖中に与えるえさに因ってコントロールしております。それと抗生物質の問題もございます。外国産養殖鮭から基準値を超える抗生物質、あるいは日本国内では使用が認められていない防腐剤、この様なものも時折検出されております。これに対し我が北海道産というのは、人口ふ化、放流はしておりますけれども、その後はオホーツク海や北太平洋で育った、正真正銘の天然物でございまして、秋鮭の流通戦略としてはこのえさや抗生物質を使っていない天然物なのだという事が、最大のセールスポイントとして注目される事になります。それで生産者団体であります北海道漁連では、この天然である事に着目致しましてマーケティングを展開しておりますし、最近は中国向けを中心に6万トンから7万トン以上を輸出しております。これらの中国に輸出した鮭は人件費の安い中国で加工された後、ほとんどの物は欧米に回っているという実情でございます。北海道の各地域についても秋鮭については積極的な取り組みが見られまして、隣の管内の標津ではいち早くHACCP(ハサップ)を導入し、食品衛生や高鮮度流通で成果を上げております。また日高管内の襟裳では銀聖といった地域ブランドを売り出しまして、マーケットでの評価を高めております。この様な取り組みもありまして、輸入物に圧倒されていたマーケットは徐々にではありますが道内関係者の知恵と工夫に因って、道内産が伸張してきておりまして、今後に期待されるところでございます。2つ目のキーワード、なんと言ってもスローフードでございます。最近、スローフードという言葉がよく聞かれる様になりましたけれども、スローフードとは普段漠然と口に運ぶ食べ物をじっくりと見つめ直す事を通して自分たちの暮らしや生き方のみならず、自然環境、地域環境を問い直そうという、大変高尚な提案でございます。言い換えれば単なるグルメ指向を促すものではなく、風土に根ざした食文化を大切にして地域に伝わる食材や調理法を守っていこうという運動でございます。スローフードの生まれはイタリアです。ローマにファーストフード店が進出しましたのをきっかけに、もちろん行った事が無いのですが、北イタリアのブラという小さな町に住む人たちが、自分たちの食文化がファーストフードによって破壊されると、その様な危機感を持ってスローフード協会を立ち上げたのがそもそもの始まりと言われておりまして、今から20年ほど前の事でございます。現在、スローフード協会というのは世界の47カ国に700の支部があって、日本には20以上の支部がございまして、北海道にも2つの支部がございます。スローフード、この様な考え方は今日世界的に注目されてきております。3つ目のキーワードは食育でございます。スローフードと同様に最近クローズアップされた考え方で、そのクローズアップの背景を探りますと、近年朝ご飯を食べない子供が増えている。あるいは食事の洋風化によりまして、カロリー摂取が増加している、この様な食生活の変化が子供達の変化に及ぼす影響が懸念されております。また一方でBSEの発生や食品の偽装表示の問題、この様な事を契機に致しまして消費者の皆さんは今まで以上に安全で安心な食品を求めるようになってきております。この様な中で心身共に健康な生活をおくる為には安全な食べ物を選択する能力、あるいは好ましい食習慣を身につける食育に関する関心が高まってきております。食育というのは広辞苑には載っていない言葉です。こうしてみると食育とは現代用語に思えるのですが、実はその言葉の由来は古く、明治時代には子育てとしつけの基本には食、体、知、才、徳育の五育とされておりました。今日、食育とは、食べる事を通して生きる事を学ぶ事とされまして、具体的には安全な食べ物についての選び方の知識を得る、健やかに暮らす知恵と能力を身につける、その上で地域の食文化を伝え、育む事であるとされています。また拡大解釈になるかも知れませんが、食べ物がどの様に作られ、どの様にして食卓まで届くかという事を知って命の素晴らしさを感じる、心を育てるといった事も含まれております。という事で、食育については先程お話し致しましたスローフードの考え方と相通ずるものがございます。安全、安心、スローフード、食育と、食にまつわる最近の考え方や動きについてお話しをしましたが、道においてはこの様な3つのキーワードを軸に食に関する政策を道政上の重点政策と位置づけまして食育の推進、新たなブランド食品の開発、あるいは北海道米の消費拡大、さらには道産品の国内外への販路の拡大などによって、食の分野において世界に通用する北海道ブランドを作るという事を大きな政策課題として掲げております。
ここまでが話の半分でございます。これから後半に移りまして、食の安全に関しまして先程お話ししておりました、貝毒についてお話しさせて頂きます。
昨年4月4日の事です。この日は私が支庁長として初仕事をした日なのですが、この日の夜、厚岸産の牡蠣から麻痺性貝毒が検出されたというのが分かりまして、直ちに出荷規制をした次第でございます。その翌週には偶然釧路入りする高橋知事が急遽行程を変更しまして、自分のお昼ご飯を食べる時間を削って厚岸漁協を訪問致しまして、集まってくれた関係者を前に貝毒検査の徹底を訴えるとともに、将来の不安に対して払拭する様な激励をしております。その後、3週連続して行った貝毒検査の結果、安全が確認されまして、4月末には規制が解除となり、出荷が再開されております。言うまでもなく、厚岸の牡蠣はブランドです。産業面からも観光面からも、希少な存在でございます。なんとしても信頼が大事な訳で、信頼を築く一番の近道はしっかりとした貝毒の監視体制を作り、それを守り続ける事ではなかろうかと、この様に考えております。
今日は折角の機会ですが、残された時間の中で意外と知られておりません貝毒の基本的な知識について、失礼とは存じますが講釈させて頂きます。
まずは貝毒の原因でございます。通常多くの貝類は海の中に自然に分布しております、植物プランクトンを餌として食べておりますが、このプランクトンの中にはもとより毒を持った種類がおります。この毒を持ったプランクトンを総称して、私共は貝毒プランクトンと言っておりますが、ホタテや牡蠣などの貝類がこの貝毒プランクトンを餌として取り込む事に因って貝の体内に毒が蓄積され、その毒を貝毒と言っております。つまり貝自体にはもともと毒はありません。餌として食べる貝毒プランクトンが貝毒の原因となります。貝毒プランクトンにはいくつかの種類がございます。道立水産試験場が厚岸湾を調べたところ、レジメに書いてありますけれどもアレキサンドリウム、タマレンセという種類の貝毒プランクトンが見つかっておりまして、これは北海道、東北地方でごくごく通常に出現する代表的な貝毒プランクトンでございます。
次はどの様な貝が貝毒を持つかという事でございますが、貝毒の原因は海中を漂う毒を盛った植物プランクトンなので、これを餌とするホタテ貝、アサリ、牡蠣、ムラサキガイなどといった二枚貝は貝毒を持つ可能性がございます。一方、肉食性巻貝でありますツブ、あるいは海水ではなく淡水に棲んでいるシジミなどは貝毒発生しません。但し貝毒プランクトンは常に海の中に発生している訳ではなく、普段は休眠胞子となって海底で眠っておりますが、たまたま海水の水温や塩分、栄養面などの条件が整うと、眠っていたプランクトンが爆発的に増殖を始め、それを二枚貝が摂取し、貝毒を呈するというのが通常のパターンでございます。厚岸湾で見つかった、アレキサンドリウム、タマレンセについては、一般的には水温が上がる春から夏にかけて発生しやすいというので、これから注意が必要な時期に入って参ります。貝毒はもともと申し上げました通り貝の体内に存在するものではございませんので、一度毒を持った貝でも貝毒プランクトンが海域から消滅しますと毒の供給がストップし、やがて貝毒は貝の体内から減少してクリーンになりますので、そうなるともちろん食べる事ができます。
貝毒の種類とその特徴についてお話し申し上げます。貝毒にはその症状に因って、いくつかの種類がございます。まず麻痺性貝毒でございますが、その名の通り主な症状としては痺れや麻痺、食後30分から3時間30分程度で発症しまして、唇、舌、顔面に痺れが出現し、手足にも広まります。重傷の場合は頭痛、嘔吐、言語障害が現れまして、呼吸困難で死亡する事もあります。これは警戒すべき貝毒でございます。毒の強さはふぐ毒に匹敵しまして、その性質は注意して聞いて頂きたいのですが、熱に対して安定しています。すなわち家庭料理程度の加熱処理では分解しないという事で、この点はしっかりと認識する必要がございます。火を通しても毒は変わらないという事でございます。それからこの麻痺性貝毒は先程お話ししているアレキサンドリウムに因るものですが、道内の噴火湾、それからオホーツク海のホタテ地帯ではあまり騒がれないのですけれども、実は毎年の様に発生しておりまして、この4月に厚岸で発生した貝毒はこれと全く同じものでございます。実際商業流通しているホタテや牡蠣につきまして、現状はしっかりとした貝毒の監視体制をとっておりますので、今まで日本国内で麻痺性貝毒による中毒事故というのは1件も発生しておりませんが、昭和50年代に噴火湾で釣り人が自然に付着している貽貝(いがい)を採って食べて、中毒を発症、死亡しております。
次はちょっと言葉があまりきれいではないのですけれども、下痢性貝毒でございます。これは食後30分から4時間以内に下痢、嘔吐、吐気、腹痛、この様な消化器系の症状が出て参りまして、発熱はございません。この辺は風邪と区分できます。通常は3日以内に回復致しまして、死亡例はございません。毒の強さはふぐ毒の16分の1程度という事なので、麻痺性貝毒に比べればかなり弱いものです。但し麻痺性貝毒同様、これも加熱しても毒は変わらないので注意が必要でございます。この下痢性貝毒と言われる、貝毒プランクトンに因るもので、これも道内のあちこちで毎年の様に発生しております。実はこの下痢性貝毒というのは世界的に日本が中毒記録の最初でございまして、昭和51年に宮城県でムラサキガイにより発生し、その後昭和59年までの10年間に50件、1000人以上が中毒に罹っております。その後は下痢性貝毒の原因が分かりまして調査、研究が進んだ結果、その様な事が判明し、貝毒に応じた出荷体制の仕組みも出来上がりましたので、最近中毒事故は激減しております。
貝毒は麻痺性、下痢性貝毒の他に神経性貝毒、記憶喪失貝毒と、この様なやっかいなものもございます。記憶に自信の無い方は胸に手を当ててよくお考え頂ければ、たぶん違うと思いますけれども、神経性貝毒は赤潮プランクトンと呼ばれるものがいるのですけれどもこれに因るもので、中毒になりますと酔っぱらった様な状態になるそうです。2〜3日で回復し、死亡する例はありません。幸いな事に今まで日本での発症例はございません。それから記憶喪失貝毒は、貝毒成分である興奮性アミノ酸に因りまして脳神経が犯されるもので、これまた日本での発症例は幸いございませんが、1987年にカナダでムラサキガイに因り107名が発症し、4名が死亡、そして12人に記憶喪失の後遺症が残っております。従って日本国内に住む我々は、記憶喪失を貝のせいにする事は出来ません。近々カナダに行って貝を食べる予定のある人はご注意をして頂きたいと思います。という事で、貝毒にはいくつかの種類がございますが、これまでの例から見て日本国内で注意すべきは麻痺性貝毒と下痢性貝毒の2種類でございます。
次は貝毒の強さ、これについてお話しします。貝毒の強さはお聞きになった事があるかも知れませんが、マウスユニットという単位で表します。ネズミ単位です。人に関しては麻痺性貝毒の場合は400マウスユニットを取り込むと発症し、致死量は3000マウスユニットとされております。少し分かりにくいのでかみ砕いてお話ししますと、麻痺性貝毒の場合1グラム当たり4マウスユニットを越えますと食品衛生法違反としての取扱を受けて出荷を規制されます。その4マウスというのがどのくらいの毒の強さを持つものかという事をお話ししますと、牡蠣のむき身1個、大小色々ありますけれども、大体15グラムとしますと、1個食べる事によって4マウス規制値ぎりぎりのものであれば4×(かける)15グラムで60マウスユニットが口の中に入る訳です。よって7個食べますと420マウスユニットを取り込む事となり、発症するおそれがあります。致死量となります3000マウスユニットに達するのは同じ計算でいきますと、50個食べなくてはいけません。そんなに食べる人はいないと思います。その前にお腹を壊すと思います。それだけ安全率を見ているという事です。
次に昨年4月に厚岸で出た牡蠣の貝毒は規制値の4マウスユニットを大幅に上回る14.3マウスユニットでした。同じように計算しますと、14.3マウス×(かける)15グラムで牡蠣1個215マウスユニット、これはかなりまずいです。2個食べただけで発症するおそれがありますし、14個で致死量に達してしまいます。実は侮れない非常に危険な状態であったという事でございまして、事故が無かったのは回収等が早かった、報道等を通じて色々広報活動をしてもらったと、この様な事があったからで、まさに不幸中の幸いであったと。もちろん、今は安全でございます。貝毒は全く出ておりません。貝毒プランクトンも見つかっておりません。そして万一貝毒が発生すれば直ちに出荷を停止し、回収を始め、市場に流通しない体制を作っておりますので、現状はご安心して頂きたいと思います。
貝毒を測定する方法です。貝毒の検査方法ですが、マウス、ネズミを使う動物定量法と、機械で分析する機器定量方法、それとバイオ技術を応用した粘液定量法と3種類があるのですが、我が国ではWHOの勧告に基づきましてマウス試験法、ネズミを使ってネズミに注射するのです。そして死ぬ時間を計って決めるのです。私は見た事がありますけれども、あまり気持ちの良いものでは無いです。ネズミの供養祭なども年に1回するのです。それも私は行った事があります。我が国はWHOの勧告に基づいてマウス試験を採用しておりまして、これが唯一正式な試験方法になります。全国統一した方法でございます。北海道内でこのマウス試験を出来る機関というのは実は2ヶ所しかございませんで、いずれも札幌、ひとつは道立の衛生研究所、もうひとつは民間の団体ですけれども日本冷凍食品検査協会と、この2ヶ所だけでございます。従って貝毒が発生しますと検査が殺到し、大量のネズミが本州から送られてくる事になります。ネズミはどこのネズミでも良いのではなく、体重が20グラム丁度の健康な雄を使ってします。雌の場合は制度が落ちるのだそうです。何故かは知りません。という事で2つの検査機関が北海道にある。
最後になります。検査体制ですけれども、道内においては現在北海道のみ、非常に広いですから、海域の特性において19のブロック、19の海域にブロック区分しまして、海域ごとに貝毒の発生状況、これは大体通常は週1回、それから時期によっては週2回、頻度を高めて参ります。その様な検査をすると共にそもそもの原因となる貝毒プランクトンを水産試験場は一生懸命に探しておりまして、これも定期的にモニタリングをして安全性の確認に努めているところです。もしプランクトンが見つかると貝毒が出るおそれがあるという事で注意を喚起する訳です。以上が貝毒についてのお話しです。
終わりにもう少しお話ししますけれども、意外な話ですけれどもフランスはホタテ貝の大消費地でございましてかなりのものを日本から輸入しておりましたが、平成2年の5月、フランス政府は突然、日本産のホタテ貝の輸入を禁止してしまいました。その理由はフランス政府が日本から輸入したホタテ貝が少し怪しいという事で貝毒検査をしたところ、出ないはずの麻痺性貝毒が規制値を上回って検出されたという事でございます。当時の私は道庁の水産部というところで水産流通の仕事をしておりまして、このフランス側の突然の措置に驚いて、水産庁とともに色々調査したところ、とんでもない事実が判明致しました。すなわち本州の加工業者、今でも業者の名前を2つ覚えていますけれども、本州の加工業者が麻痺性貝毒が発生して出荷出来ないはずの北海道産のホタテ貝、産地は噴火湾です。これをブローカーを使って闇で買い集めまして、本州産と偽ってフランスに輸出した事が明らかになりました。要するにインチキです。産地偽装です。しかも毒があったと。その様な事で日本産のホタテ貝の安全性に強い不信感を抱いたフランス政府が輸入禁止措置をしてしまったという事で、その措置は長らく継続され、やがてEU全域にも引き継がれ、日本側は輸出用ホタテ貝の衛生管理システムについて再構築を迫られる事となりました。その後幾多の紆余曲折を経て、フランスも含めたEU全体が日本産ホタテ貝の安全性を認め、輸入禁止を解除したのは平成15年の4月でございます。輸入禁止以来、実に13年ぶりの事でございます。何を言いたいのかと申しますと、食品にとって一番大事なのは言うまでもなく安全でありまして、信用を失うのは一瞬でございますが、信頼を回復する為には大変な努力と時間が必要だという事でございます。食糧供給基地としての北海道、この事を最優先に考えるべきと思います。安全、安心が北海道ブランドの最大の条件であるという事、この様に確信しております。以上を申し上げまして、私のお話しを終わります。どうもありがとうございました。