通 算 3439回 |
2016-2017年度 第25回 例会報告 2017年1月26日 |
例 会 内 容 日本銀行釧路支店長 講話 〜釧路地域の経済情勢について〜 |
まず、IMのお話しです。3月25日(土)でございますが、音別ロータリークラブの川村利明ガバナー補佐の下、IMが開催されます。主催としての音別ロータリークラブに白糠ロータリークラブがお手伝いをするという形式になっております。昨年、当クラブの白幡ガバナー補佐の下でIMを開催しまして、たくさんご参加をいただきましたので、ぜひ3月25日、この日を手帳にマルを付けていただきまして、IMに参加をしていただきたいと思っております。場所は「ANAクラウンプラザホテル釧路」でございます。市内開催でございますから参加し易いのではないかと思っております。 テーマは『ロータリー 今日まで、そして明日から』となっております。規定審議会などがありまして、いろいろな仕組みやルールなどが変わって来ております。その中で、サブタイトルとして『ロータリーに明日はあるのか…。』がついておりまして、当クラブの小船井パストガバナーがご講演をされることになっております。少しドキっとするような内容でございますので、ロータリーに本当に明日があるのかないのかということを小船井パストガバナーの切り口でご講演いただくことも非常に楽しみにしております。 本日の例会でございますが、日銀の森支店長様に『釧路の経済』についてお話しをいただくことになっております。森支店長は、12月に着任されまして、日がまだ浅そうございます。今年は非常に寒い日が続いています。月曜日には大変な雪が降りまして、皆さん除雪で苦労をされたと思います。寒さと雪で苦労する釧路を体験していただきながら、着任1か月少しでお話しをいただくことも大変心苦しいのですが、聡明な方ですので安心してお任せできます。 本日は、栗林会頭と栗林延次会員、三ツ輪グループの両巨頭がこの経済のお話しを虎視眈々とご自分の会社に活かそうということで来られております。栗林会頭におかれましては、昨日・今日・明日と講演を聞かれるということで、3回もチェックされるということを森支店長からお聞きしました。怖いですね。ただ、釧路の発展はやはり商工会議所が中心に、ということになりますので何回でも聞いていただきまして、我々にいろいろなご指示を与えていただければと思っております。 私が関わっています勉強会で「林業」の話が出ました。ドイツはGDPの約5%、6兆円を林業で稼いでいるそうです。大体90万ヘクタールで6,000億円〜7,000億円の収入があるそうです。そうすると、釧路管内で90万ヘクタールは、6,000億円〜7,000億円を稼ぐ余地があるということをお聞きいたしました。最近、林業の輸出も毎年20%位ずつ増えているそうです。たいした金額ではありませんが、昨年度で263億円位ということでございますから、これは釧路地域だけでももし積極的に林業を行えば6,000億円〜7,000億円の収入が出来る可能性があるのかなと思っておりまして、基幹産業の水産や製紙業、炭鉱などがありますけれども、それ以外に林業も注目出来るのではないかとその勉強会で思ったところでございます。 余談ですが、その勉強会で「釧路には美人が多い」という話を外部の化粧品メーカーを引退された方が言われておりました。「夏も涼しく、紫外線も押さえられ、霧が出て自然のモイスチャーということで、肌がすごくきれいな方が多い」というお話しをされていました。 そのような利点も釧路地域にはたくさんある、ということをお伝えし挨拶とさせていただきます。 |
プログラム委員会 副委員長 小野寺 俊 会員 先週に引き続き担当させていただきます。46歳最後の日にプログラムを担当し、お誕生日のお祝いをいただき、そしてタクトを振らせていただきました。本当に充実した46歳最後の日を迎えております。 話は変わりまして、本日の例会プログラムは毎年恒例でございます日銀支店長によるご講演となっております。前任の植木会員が年末に転勤をされて、新任の森支店長様には、入会早々ご講演をいただくということでお詫び申し上げるところでございます。森支店長のプロフィール等につきましては、先日の入会セレモニーの中でもご披露していただいたこともありますので、割愛をさせていただきます。 それでは、早速ではございますけれども、『釧路地方の経済情報について』と題しましてご講演をよろしくお願いいたします。 日本銀行釧路支店 支店長 森 成城 会員 小野寺様、ありがとうございました。私は、いまおっしゃっていただいたとおり、まだ着任早々でございまして、しかも実際に経済を動かしていらっしゃる方々の前で経済情勢を語るということは緊張しますが、私どもが経済情勢を分析する際に、経済の数字・統計を分析し、同時に、我々は「ミクロヒアリング」と言っていますけれども、実際に企業を経営されている方などにお話しを伺って、いわば「マクロ」と「ミクロ」の両方からアプローチするというやり方をとっております。その点をご理解いただいた上で、しばらくお付き合いいただければ幸いです。 それでは、時間も限られていますので早速本題に入りますが、本日は4つのトピックを用意いたしました。 資料の表紙の「目次」の下に書いてございますが、最初のトピックは『世界経済、国際金融市場の動向』ということでございます。私はこれまで国際関係の仕事に携わる機会が多くございましたので、いま話題の人(トランプ大統領)についても若干触れさせていただきたいと思っております。 2番目が『道東地域の景気動向』でございます。日本銀行釧路支店は、ご案内かもしれませんけれども、道東地域、具体的には十勝・釧路・根室という3つの振興局を管轄しておりますので、十勝総合振興局という農畜産業中心の地域の話も入っておりますので、必ずしも釧路地域の経済情勢ということにならない点を予めお断りした上で、出来る限りお話しをさせていただきたいと思っております。 3番目が『各地域における住宅投資の動向と関連企業等の対応状況』でございます。このトピックを選んだ理由は、日本銀行が昨年1月に「マイナス金利政策」を導入して以降、住宅投資の動きや不動産市場の状況が結構全国的に関心を集めております。これを踏まえて、今年1月の支店長会議のときの特別調査の話題として住宅投資を取り上げました。その結果がまとまりましたので、少しお話しをさせていただきたいと思っております。 最後が『日本経済の課題』ということでございまして、これは個人的な見解をお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。 1枚めくっていただきまして、1ページ目をご覧下さい。1ページ目の上の表は、政策当局者が世界経済見通しとしてよく参照するIMF(国際通貨基金)が発表している「世界経済見通し」でございまして、つい先日最新のものが出ました。前回が2016年10月でございまして、それとの比較という観点で見ていただきますと、先進国経済の成長率は2017年、18年と若干上方修正されております。新興国・途上国というところをご覧いただきますと、ほぼ横ばいでございます。先進国についてご覧いただきますと、日本も2017年の見通しが0.2%ポイントほど上方修正されていまして、これはこのところ輸出の状況が改善しているということが主な理由です。アメリカについては、トランプ新政権の経済政策の効果を、2018年を中心に織り込んでおります。 次のページをご覧いただき、トランプ新政権の経済政策について少しお話します。ここでは、大統領選挙中に政策綱領というものを発表していまして、それに基づいています。右側が、下院共和党が同時期の議会選挙のときに発表していた政策綱領でございまして、その両者を比較して見たいと思います。経済への影響という観点からすると財政政策が中心になりますので、税制と政府支出というところにご注目いただきたいのです。これを見て分かることは、税制改正の内容はほぼ下院共和党とトランプ大統領の政策綱領は共通しています。他方、政府支出に目を転じていただきますと、トランプ大統領の方は今後10年で1兆ドル、下院共和党の方は10年間で1,000億ドルということで、後者の規模が1/10でしかないということでございます。 下の方のグラフは、このような経済政策が仮に実行された場合にどれだけアメリカの経済に効果があるのかということを試算したものでございます。試算の前提となっているものは、下院共和党の方の案になっている点にご留意ください。アメリカでは、基本的に財政政策を実施するには法律を通す必要がありまして、法案は議員立法です。そのような意味で下院共和党が合意できる内容が実現する蓋然性が高いとみられます。 左側のチャート、赤い線と青い線がありますけれども、これが下院共和党の案が実施された場合の効果ということでございます。両者の違いは、拡張的な財政政策が実施されることによって、長期金利が上昇するとどうなるかという点を織り込んでいる点でございます。青い線では、長期金利が上がってしまう場合に、民間の投資などが抑制されてしまうので、その分で効果が相殺されてしまうということでございまして、今後の経済政策の効果をみる上では、アメリカの長期金利の動向が重要ということになります。 次のページにいっていただいて、中国との関係という点で少しだけ申し上げたいと思います。最近の中国の資本流出と人民元レートの下落というところをご覧いただくと、実は人民元の切り下げが行われた2015年夏以降、中国から投機的な資本が出ていく傾向がみられます。それによって、人民元の為替相場が安くなっているということがあります。下の方をご覧いただくと、中国の外貨準備高が減少していますので、中国当局が米ドルを売って人民元を買うという為替介入しているから外貨準備が減る、すなわち人民元が安くならないような介入をしているということを示唆していると思われます。この点は、アメリカの今後の対中政策を考える際に念頭に置いておく必要があると思います。以上がトランプ新政権の経済政策に関連するお話しでございます。 次の『先進国の金融市場』については、時間の関係で手短に申し上げますと、先ほど金利動向のお話しをしましたが、左上のグラフにありますとおり、トランプ氏が大統領に選ばれて以降、アメリカの長期金利はドイツや日本の長期金利に比べてかなり上昇幅が大きくなっています。その結果として、金利差が開いていますので、相対的にドル高になっています。 こうしたもとでも、昨日のニューヨーク市場で話題になっていましたが、ダウ平均が2万ドルを史上初めて超えるという株価上昇局面になっています。 次のページで株式市場の動きを業種別動向の特徴を中心に申し上げたいと思います。グラフは業種別の騰落率ですが、大統領選以降今年1月半ばまでの業種別上昇率を示しています。特徴点は3点あります。 @エネルギー・資源株が上がっています。A金融株が上がっています。これは日米欧共通でございます。B「内需ディフェンシブ株」といわれる、食料品、小売、医薬品等の株価は相対的にアンダーパフォーム、上昇率が低くなっています。第一に、エネルギー・資源株の上昇については、もちろんこれはOPECの減産合意が行われて原油価格が持ち直して来たからということもありますが、インフラ投資などを拡大すれば世界経済が回復するだろうとか、トランプ新政権のもとで、エネルギー業界に対する規制緩和が行われるという思惑も背景にあるように思います。 金融株については、金利が上昇局面に入っているということで、利鞘が拡大するのではないかということや、経済見通しが改善すれば銀行の貸し出しなども増え、これも収益改善につながるとの見方が背景にあるとみられます。一方、内需株は、各種物価の動向次第でコスト高になるという面もありますので、若干アンダーパフォームしているのではないかと見ております。 続きまして、いよいよ本題である『道東地域の景気動向』でございます。最初に、日本経済ならびに北海道の景気動向に対する日本銀行の見方について簡単にお話ししたいと思います。こちらは1月16日に、日本銀行本店において開催された支店長会議での議論を踏まえて公表された景気概況を地域別にお示ししております。 全国を9つの地域に分けております。前回2016年10月との判断の比較で言えば、東北・関東甲信越・東海の3地域で景気判断を前回の昨年10月から引き上げております。一方、北海道を含む残り6地域については、景気判断を据え置いたということでございます。引き上げた3地域については、いままで輸出・生産が新興国経済の減速の影響を受けておりましたけれども、持ち直してきているということ。それから株価動向や昨年の天候不順などの影響を受けて弱めの動きが見られた個人消費も最近は持ち直しているということが上げられます。 北海道全体の景況感は緩やかに回復をしているという判断でございます。こちらは、公共投資の緩やかな増加や輸出が改善している先もみられますほか、企業収益が比較的堅調に推移しているということで支えられています。他方、例えば設備投資について北海道は高水準ながら弱めの動きというように若干判断を弱めにしました。これは、12月の短観の結果を踏まえたものでございます。では、いま申し上げた12月短観の結果について次のページでご覧いただきたいと思います。 この7ページ目では、短観の調査結果を示していますが、12月というところが一番最近の結果でございます。全国の支店別の全産業の景況感を順位付けすると、例えば釧路支店の短観は何位かということが分かるような形をお示ししております。 一番上の本店・全国というところをご覧いただくと、9月と12月を比較すると+5から+7ということで、2ポイント改善しました。一方、釧路は+4から+4、札幌は+5から+5ということで横ばいでした。その結果として、全国の中での順位も釧路支店は、9月は17位でしたけれども26位に落ちてしまいました。全体で34のうちの26位ですから後ろから数えた方が早いということになっています。 もう少し詳しく私ども釧路支店がまとめた道東地域の短観の結果に絞って、お話し申し上げたいと思います。先ほど申し上げましたとおり、全産業の景況感は+4から+4ということですので横ばいですけれども、業種別に見ますと少し動きがございます。例えば、2番目の表で製造業は9月の−3から12月が±0、非製造業は+6から+5ということでございまして、製造業が若干改善しているということでございます。業種別で見ますと、水産加工が9月が−71で、これは明らかに水揚げ量不振の影響ですけれども、12月は少し年末の需要が増えるのではないかということで前回より改善しているという先がありましたので、その結果として−71から−43ということで、改善していますけれども、水準としてはかなり大幅なマイナスがまだ続いているということでございます。 それから窯業・土石のところ、0から+25ということになっていまして、釧路支店の短観は十勝地区が入っていますので、台風の被害が大きかった十勝地区を中心に台風後の復旧工事の増加を見込むということで窯業・土石が改善しています。 次のページに行っていただきまして、景気判断についてもう少し細かく需要項目別にお話ししたいと思います。 まず全体観を申し上げると、道東地域の景気は「台風被害や水揚げ量の減少の影響等から、全体として足踏み状態にある」という判断を据え置きました。これは、10月・11月・12月と変えておりません。また先行きについても、「国内外の需要動向や燃料価格などの各種コストの動向に加え、今般の台風がもたらした生産・観光面へのマイナスインパクトや、企業や家計のマインドへの影響などに注視していく必要があると考えている」ということでございます。要は、台風被害の影響を勘案していつまでこの判断を維持するかというところが今後の留意点ですが、その点は、例えば生産や観光面への影響がどうなっていくかということに加え、台風等の影響により企業や家計へのマインドが少し弱含んだということがありましたので、そこが今後どう持ち直してくるのかという点も見極めながら、総合的に判断していきたいと考えております。 次のページ以降で項目別にもう少し詳しく申し上げたいと思います。まず、公共投資ですが、こちらは基調としては、数字を見る限り緩やかに増加しているということでございます。例えば私どもが見ている11月の公共工事請負金額を地区別に見ますと、根室は前年を下回りましたが、釧路・十勝は前年を上回っておりまして、道東全体でも2か月振りに前年を上回ったということでございます。下の表に最近の主な大型工事を載せております。 続きまして、設備投資は総じてみると横ばい圏内で推移しているということでございます。主要企業の16年度の設備投資計画をみると、前年から引き続き大口投資が減少しているものの、足もとでは生産ラインの導入や店舗の拡張といった能増投資による上方修正が見られております。短観でカバーしていない農業や医療・福祉系では、引き続き新規投資が見られるということでございます。設備投資に関連する統計として10月の建築物着工床面積は前年を下回っているということでございまして、こちらは前年に大型施設の着工がございましたので、その裏が出た形で前年比ではマイナスになっているということでございます。 若干補足しますと、幅広い業種で設備の維持更新・建設、車両の購入といった能力増強の動きが見られております。ただ、例年この時期に計画が上方修正がされる傾向がございますが、その幅としてはさほど大きいものではなく、企業収益は比較的高水準ですのでそれとの対比で見ると設備投資の勢いが欠けているのも事実ということでございます。 次のページへいっていただいて、消費について述べたいと思います。まず、全般的な判断については、「個人消費は、一部に明るい動きが見られるものの、全体として弱めの動きになっている」ということでございます。「一部に明るい動きが見られるものの」というのは、11月には入っていなかった表現で、その意味では12月に幾分上方修正した形になっています。こちらは耐久消費財の販売動向を反映したものでございます。主要小売店の売上高は、食料品が単価の上昇もあって前年を上回ったほか、衣料品がセールの好調などから前年を上回っており、全体でも前年を上回ったということでございます。 では、一部に明るい動きと申し上げた耐久消費財についてです。具体的には、自動車・家電販売の動きでございます。まず乗用車の新車登録台数、これは11月の数字ですが、軽自動車が前年を下回ったものの、普通車・小型乗用車が前年を上回ったことから、全体でも前年を上回ったということでございます。普通車・小型車は新型の自動車、例えばセレナやプリウス、ノートなどが比較的好調でございまして、このような新型車投入の効果が見られたということでございます。 家電販売は、テレビや白物家電のほか、エアコンや除湿器など季節性商品の販売が堅調でして、パソコンも持ち直しているということでございます。家電販売に携わっている方に聞いてみますと、テレビや省エネタイプの冷蔵庫・洗濯機・LED照明・調理家電などが売れ筋になっているというお話しでございました。 住宅投資については、住宅着工を見ると、下げ止まりつつあると評価をしております。こちらは、10月の新設住宅着工戸数は、持家が5か月連続で前年を下回ったのですが、貸家が2か月連続で前年を上回り、全体でも2か月連続で前年を上回ったということでございます。貸家は、投資需要から増加傾向にある一方で、持家の方は消費税引き上げ延期を受けて購入を急がなくなった動きが依然として残っているということが、私どもが管内で伺ったお話しでございました。後で住宅投資の話をもう少し詳しめにいたします。 次のページには、旅行・観光でございます。こちらの主要温泉地の宿泊人数は、台風等によるJR不通の影響などから前年を下回りました。市内ホテルの宿泊人数は、ビジネスホテルが堅調であったほか、イベントやスポーツ大会の開催もあって前年を幾分上回りました。空港の乗降客数は、JR北海道の代替手段として航空便が利用されたことから前年を上回っております。 生産に移らせていただきまして、台風の影響等もあって、全体として弱めの動きになっております。主要業種の動向を見ますと、製材は梱包材生産が好調なことから前年を上回ったということでございます。製紙も前年を上回っております。一方、水産加工は、原魚の水揚げ不振により前年を下回ったほか、乳製品も生乳生産の減少に伴い前年を下回ったということでございます。水産加工は、ヒアリングによれば、減少基調が続いているということでございまして、サケ・サンマ・スケソウダラの不漁による原魚の減少や価格上昇が影響しているということでございます。イワシは豊漁でミールが増産になったというお話しを聞いていますが、全体をカバーするには至っていないということでございました。 それから生乳生産については、やはり台風の影響もあるようでございまして、乳房炎で少し減少しているということ、そして、夏の長雨も影響して牧草の品質が低下したということでこれも生産の減少に繋がっている模様でございます。 次のページで雇用情勢についてお話し申し上げます。こちらは着実に改善しております。有効求人倍率は84か月で前年を上回ったということでございます。職種別に見ますと、事務職は供給余剰感がございますが、接客サービスや技術系職の求人倍率が高く人手不足感が非常に強いという話が聞かれていまして、職種間のミスマッチが見られるとの印象を受けております。一方、釧路・根室地域では、水産加工や運輸業などの求人が少し減少していることを気がかりな動きと考えております。 最後に金融面ですが、こちらは預金残高と貸出残高の動向でございます。預金残高は流動性預金を中心に増加をしておりまして、貸出残高は前年を上回っております。貸出については、個人向けの貸出は住宅・消費性ともに増加しているということでございます。法人向けについては、設備資金が医療・福祉関連、小売、農業などで増加しているということを聞いております。 最後の話題として、『住宅投資の動向』について、日本銀行の本店・支店の総力を挙げて調べたことについて述べたいと思います。時間の関係もありますので、全国の動きを説明しつつ、道東地域の動きと比較する形で申し上げたいと思います。 まず、全国の全体感は、資料にございますとおり、住宅投資は「全体として持ち直しを続けている」ということでございますけれども、道東地域は若干弱めでして、「投資需要の増加を受けた貸家の持ち直しにより下げ止まりつつある」という程度との印象を受けております。利用関係別で見ると、まず持家については、釧路・根室周辺では、漁業の水揚げ不振の影響があって少し購買スタンスが後退しているという印象を受けました。農業が中心の十勝地区は相対的に底堅かったのですが、台風の被害の後は幾分弱めになったという声が聞かれました。特徴的な動きとしては、中古住宅をリフォームすることで、新築物件より安価な住宅を販売するといういわゆるリノベーションというものがこちら釧路の辺りでも増加しているという声を聞いております。 貸家については、道東地域の企業経営者や農家の資産運用ニーズ、それから相続税増税を受けた節税ニーズ、低金利や金融機関の積極的な貸出などを背景として、貸家の着工は先ほど統計でもご覧いただいたとおり増加を続けております。これは全国と同様の動きになっているということでございます。 他方で懸念として聞かれることは、多くの地主が短期間のうちに貸家経営に乗り出した結果、貸家市場全体で見ると需給が緩みつつあるとの声が聞かれています。実際、賃貸物件の仲介業者からは、郊外の中古アパートなど相対的に魅力の乏しい物件を中心に空室率の上昇や家賃の下落がみられているという声が聞かれていまして、これは全国の説明でも書いてあるとおり、同様の動きがみられています。 道東地域は、分譲マンションの数が少ないので、少し全国の動きと比較することが難しいのですが、先行きについて道東地域は人口減少が重石になるとの見方が多いという意味でも少し弱めだと思っています。こうした点は、世帯数の増加が続いている大都市や他地域の都市部に比べてやや慎重な見方と感じました。 最後に今後の『日本経済の課題』ということで、少し個人的な見解を述べたいと思います。まず、16ページにありますとおり、政府の目標は中長期的に2%の実質成長率を目指すことです。そのためには、労働生産性を上げるということと、就業者数の変化率を改善させるということが必要になります。この点、日本の場合、下のグラフからお分かりになるとおり、アメリカに比べますと、労働生産性の水準が低いということがあります。アメリカが100とすると日本が65くらいでございます。これは特に非製造業の生産性が低いということが言われていまして、例えばIT投資やそれに関連する専門性が不足しているからITの活用という面で海外の主要先進国から遅れをとっていると言われております。ただ2000年以降の生産性上昇率の平均を見るとアメリカにさほど引けを取らないくらいの上昇率となっていますので、労働生産性がさらに改善することでキャッチアップが続けばと思っているところです。一方で、もうひとつ申し上げたかったことは、当然、就業者数が減っていくと、その分だけ生産性をもっと上げなければいけないということになります。それでは、就業者数を増やせないのかということも考え方としてあると思います。そこで、参考という最後の一枚紙に移りたいのですけれども、こちらは、就業者人口の減少ペースをいかに抑制するかという観点で、政府が目指しておられるように、女性・高齢者の活用ということが求められると思います。表では、女性の労働参加を促すために取られて来た施策を上げました。特に目立つことは、第一子出生後の女性の就業継続率の上昇でございます。こちらは最近の特徴的な動きでございます。 とくに申し上げたかったことは裏側でして、こうした中で長時間労働の是正といった働き方改革が積極的に議論されており、これは重要です。こうした取り組みは、生産性の向上、出生率の上昇、女性・高齢者の就業促進のいずれの観点からも避けて通れない課題と考えます。 働き方改革は、大都市の問題ではないかとみられるかもしれませんけれども、大都市の大企業で就労環境を改善する動きが一段と進めば、職場としての魅力がさらに高まりますので、潜在的な就業者が大都市に転出する動きに拍車がかかる可能性もあるという観点から、地方都市における求職者数がさらに減少して人手不足の問題が一段と悪化する可能性は否定できませんので、やはり働き方改革の議論は大都市の問題として片づけずに注視していかれた方が良いのではないかと考えています。 時間が来ましたので、以上です。ご清聴どうもありがとうございました。 点鐘 |
お名前(敬称略) | 内 容 |
今年度累計 1,082,000円 |